「フェルメールとレンブラント:17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち展」@森アーツセンターギャラリー


フェルメールとレンブラント:17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち展

展示概要

期間

2016/1/14(木)~2016/3/31(木)

※1/19(火)

場所

森アーツセンターギャラリー

住所: 東京都港区六本木6-10

連絡先: 03-5777-8600

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見どころ

本展示の特徴

キャッチコピーが『光のフェルメール。闇のレンブラント。』となっているだけあって、レンブラント・ファン・レインとヨハネス・フェルメールの作品が来日しているというところが美術館側としての推しポイントのようです。

ですが、個人的にはこの『闇のレンブラント』という言い方が納得いきませんね。笑

フェルメールは室内の物に当たって反射する外光を、白い粒を描くことで再現するポワティエという技法を駆使しました。一方のレンブラントは、明暗を駆使して劇的な光を生み出した画家です。レンブラントに強い影響を与えたのは、レンブラントより1世紀ほど前に活躍したイタリアの画家、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョで、彼は元々あった『キアロスクーロ』という明暗法の明暗差をさらにはっきりとさせた『テネブリズム』を駆使した画家でした。

レンブラントは、カラヴァッジョの用いた『テネブリズム』の荒っぽさをとったような表現をおこなう画家です。また非常に面白いことに、レンブラントは光の当たっている部分を明るく描くだけでなく、絵の仕上げとして、暗くしたい箇所にあえてグレーを塗り重ね、明るいところだけを抜いていく描き方を生み出しています。そういう独自のスタイルを確立知った点からも、レンブラントが”光の魔術師”と呼ばれることには納得できるのですが、”闇のレンブラント”はちょっとなぁと思ってしまいます。闇ではないですからねぇ。

さて、私の愚痴はさておき(笑)、本展示の特徴をもう少し掘り下げましょうか。

副題こそ、『フェルメールとレンブラント』となっていますが、本題は『17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち展』となっています。17世紀のオランダはオランダという国名ではなく、現在のオランダとベルギー北部にまたがる『ネーデルラント連邦共和国』でした(一応ここでは分かりやすいようにオランダという呼称を使います)。

17世紀のオランダは隣国ポルトガルが優位だったインドの支配をポルトガルから奪い、香辛料による貿易の権利を手にしたことで、非常に豊かな時代を迎えました。それ故、黄金時代と呼ばれるんですね。

経済的に安定すると活発に消費行動がおこなわれます。画家たちにもきちんとお金持ちのパトロンがおり、世に求められるままに、様々な絵画のスタイルが商売として成り立っていきます。

それまでの絵画の歴史では宗教画や神話画、歴史画と比べると”劣る”とされていた、風景画や海景画、肖像画、静物画、風俗画などがジャンルとしてどんどん確立していきます。

本展示では、オランダの豊かさと共に確立した風景画、海景画、肖像画、静物画、風俗画といった各ジャンルの作品をそれぞれピック・アップして展示しているところが良かったですね。そのおかげもあってか、とてもボリューム感のある展示で、別段ゆっくり回ったわけではなかったのですが、2時間くらいたっぷり鑑賞しました。

楽しむポイント

本展示の特徴で楽しむポイントもちょっと触れてしまっていましたが、もうちょっとだけ突っ込んだ楽しむポイントを書こうかと思います。

17世紀のオランダの美術の面白い点は、”グレーがかった空模様”と”文化や生活が見える風俗資料としての絵画”だと思っています。

“グレーがかった空模様”に関しては、かなり私の個人的な感覚によるところが大きいです。

オランダは地中海側ではなく、北海側に面している国です。そのため非常に雨が多い気候帯で、海を挟んでお隣のイギリスと同様に、オランダも雨が多いです。それ故、絵の中で描かれる空もグレイッシュで独特なアンニュイさをたたえているものが多いです。

そこが一つ、オランダの絵画の魅力だと私は考えています。ただ最初に書いたとおりで、これに関してはもう個人の好みの話になるので、ビビッドで明るい色合いが好きな方はオランダの絵画よりも、イタリアの例えばヴェネツィア辺りの絵画の方が良さを感じるかと思います。

そういえば、本展示にはオランダ画家がイタリア旅行をしたときの風景画もありました。

ですが、心持ち空の色が明るく感じる程度で、やはりグレーな空でした。笑

どうやらオランダで生活している画家たちにとっては、いかに太陽光が明るくとも、空はグレイッシュなものなのかもしれません。

さて、本展示の面白い点としてもう一つ私が挙げた”文化や生活が見える風俗資料としての絵画”についてですが、こちらは主に風俗画についての話です。

本展示でも何点か展示されているオランダの黄金時代の画家ヤン・ステーンの風俗画作品は、どれもオランダの人々のリアルな営みを描いているものです。ヤン・ステーンは兼業で居酒屋を経営しており、どうやらそこで観察した人々を描いていたようです。それによって艶めかしい人々の乱痴気騒ぎを絵の中に垣間見ることができます。

ただ、ヤン・ステーンの絵は教訓的なところがあり、「こんな堕落した生活を送っちゃダメですよ!」と示す目的もあったと思われるので、お酒飲んで女の子にちょっかい出している下品なおっさんがオランダの庶民生活の全てではございません。(どんな絵だよ!とツッコミたくなった方は、是非展示へ行ってみてください。)

ヤン・ステーンの作品以外にも、当時のオランダの人々の生活を彩る食べ物や服飾品、建築などが随所に見られる作品が盛りだくさんなので、絵についての知識がない方であっても想像をかきたてられるような展示となっております。

一点、ちょっとご注意いただきたいのは、フェルメールの作品が展示のメインビジュアルにもなっている『水差しを持つ女』のみであることでしょうか。フェルメールは元々真作が非常に少ない画家で、現在も30点ちょっとしかフェルメールの真作と認められておりません。また、レンブラントの作品も点数自体は少ないです。

ですので、本展示についてはフェルメールとレンブラントの作品を楽しみにいくというよりは、オランダ黄金時代にジャンルとして確立した風景画、海景画、肖像画、静物画、風俗画を鑑賞するのを楽しんでいただくのが良いかと思います。