グランド・ジャット島の日曜日の午後


画像_ジョルジュ・スーラ「グランド・ジャット島の日曜日の午後」絵のタイトルは?

[日] グランド・ジャット島の日曜日の午後

[英] A Sunday Afternoon on the Island of La Grande Jatte

[仏] Un dimanche après-midi à l’Île de la Grande Jatte

誰が描いた絵?

ジョルジュ・スーラ

いつどこで描かれた絵?

1884~1886年、フランス

何のために描かれた絵?

自身の研究していた光学理論や色彩理論に基づき、画家自身の作品として制作されました。

何が描かれている?

グランド・ジャット島はパリの西側を流れるセーヌ川の中州にある島です。

現在は閑静な住宅街と公園の広がる島になっていますが、スーラが描いた19世紀後半当時は、田園風景の広がる島でした。それゆえ、フランスの人たちにとっては格好のピクニックスポットであったようです。

タイトルに「日曜日の午後」と入っていることからも、ここに描かれているのはグランド・ジャット島で穏やかな休日を過ごす人々の姿です。人々はセーヌ川を前にして、立って眺めたり、寝そべったり、楽器を演奏したり、駆け回ったり、釣りをしたり、思い思いに過ごしています。

実はよく見ると、絵の端には枠のようなものが描かれています。こちらもべた塗りではなく点描で描かれており、これはより陽光の明るさがよりダイレクトに鑑賞者に伝わるように、印象派展の出展が終わった後にスーラが描き加えたものです。

どうやって描いた絵?

カンヴァスに油彩。

点描画を駆使して描かれています。

この絵の見どころ

完全に計算しつくされた点描画

点描画といえば、ジョルジュ・スーラ、スーラといえばこの絵、というほどに著名な絵画ですが、この作品が点描で描かれていることは知っていても、なぜ点描で描いたのかをご存知の方は少ないでしょう。

点描画はこの絵のとおり、ふわっとした柔らかい仕上がりになりますが、実はきわめて科学的な裏付けのあるアプローチの一つなのです。

ジョルジュ・スーラが活躍した当時は、既に印象派の画家たちによって、「いかにして外の世界の光を描くか」が研究、実践されていた時代でした。

ところでみなさんは「色の三原色」と「光の三原色」をご存知でしょうか?美術の授業で必ず学ぶので知っている方が多いことと思います。

「色の三原色」と「光の三原色」の大きな違いは、色は重ねれば重ねるほど黒に近づいてゆき、光は重ねれば重ねるほど明るく白くなっていくことです。

陽の光によって形作られている現実世界を絵に描くという行為は、まばゆいほど白く明るい光を、一度目で「こんな色だな~」と捉え、それを絵の具を混色するなどして描くことになるので、絵の中で光の明るさを表現することができませんでした。

そこで印象主義の画家たちは、絵の具で光の色を再現しようとせず、結果として見たときに光を感じる絵を描きました。要するに、なるべく混色をせずに、例えば赤系の色や青系の色をペタペタと近くに置いていき、離れて見ると紫がかって見える、といったようなことをしたのです。その描き方は当時、画期的で新しいやり方でした。

スーラは新印象主義の画家と言われていますが、まさにこの印象主義に”新”を冠するにふさわしい画家です。なぜならスーラはこの「混色をせずに様々な色の置き方で光を描く」というやり方を、徹底して科学的に実践したからです。

さらに、より効果的に光をより小さく分割し敷き詰めるように配置する点描画を開発したのです。点描画には実はこんな歴史があったんですね。

ただ、スーラの点描画はあまりに徹底して理論を実践していたこともあり、絵画全体に躍動感がありません。印象主義と比べても、下地以外全てを色の点として描いているがゆえに、とても静かな絵に仕上がっています。

この静けさがなんだか海外の絵本のようで私は好きですね~。みなさんはいかがでしょうか?

近づいたり離れたりして楽しむ

アメリカのシカゴ美術館に所蔵されている作品ということもあり、私は実物を見たことがありませんが、印象主義や新印象主義の作品は、絵から近づいたり離れたりして、画家たちが描こうとしていた光を感じると楽しむことができるかと思います。

スーラの点描画作品は、彼が色と光の関係を分析して描いた作品で、中でもこの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」はジョルジュ・スーラ最高作品と言われているものです。何せ2年もかけて辛抱強く仕上げた絵画ですしね。技術の粋を感じることができるでしょう。

アメリカまで行くのはちょっと…という方は、是非作品の画像を拡大したり縮小したりしながら見てみてください。おすすめはセーヌ川の水面の描写です。思わず「おお~」って感嘆しますよ。

なぜアメリカの美術館にあるの?

「グランド・ジャット島の日曜日の午後」はアメリカのシカゴ美術館に所蔵されていますが、実はこうなった背景にはこの作品をめぐるヨーロッパ側の苦い歴史が関係しています。

印象主義に端を発する絵画の革命は確実に進行していながらも、どこかヨーロッパの絵画のスタンダードとしては受け入れられていませんでした。印象主義の流れを組む新印象主義やポスト印象主義の画家たちも、生前まったく評価されず不遇のうちに亡くなった方も多くいます。

ジョルジュ・スーラも31歳という若さで亡くなっています。もともと寡黙な研究者タイプだったスーラは気に入られる絵を描くような世渡り上手だったわけでもありませんでした。

それゆえ、「グランド・ジャット島の日曜日の午後」はスーラの死後すぐは売れなかったようです。スーラの友人がなんとか苦心して売ったようですが今では考えられないくらい低い値打ちでした。

最終的にシカゴのコレクターの手元に渡り、そのときにようやくスーラの祖国フランスでも「これはすごい絵画だ」となったわけですが…、時すでに遅し。結局買い戻しにも失敗し、シカゴ美術館に飾られ続けているのです。

ここからは個人的な見解ですが、このような事態を招いたのは近代芸術が商業主義に則りアートマーケットで値打ちを決めるようになり、絵画を芸術作品として独立した形で売買するようになったことが原因の一つとしてあるのかなぁと思っています。

近代以降、絵画の価値を決めるのは評論家や権威ある芸術家たちになりましたが、かつてと違い誰でも芸術を楽しめるようになった今、絵画の価値関係なしに、良いと思った絵画を鑑賞するのが、どの作品にも共通する楽しみ方でしょう。

ちなみに私が「グランド・ジャット島の日曜日の午後」を好きになったきっかけは、「なんだか色鉛筆で描いたような静かでやわらかく眩しい絵画だなぁ」という感想をもったからです。絵の力とは、このように鑑賞者の心を動かすところにあると思います。

どこで鑑賞できる?

シカゴ美術館(アメリカ)