ジョルジュ・ド・ラ・トゥール


プロフィール

生誕/死没

1593年~1652年

フランス

代表作

聖ヨセフ

画家_ジョルジュ・ド・ラ・トゥール「聖ヨセフ」

ラ・トゥールの最大の特徴である、夜というシーンと、光の明暗が分かりやすく表れている作品の一つです。

いかさま師

画像_ジョルジュ・ド・ラ・トゥール「いかさま師」

中野京子さんの「怖い絵」で見事に表紙を飾っていた作品ですね。こういう風俗画も描いたようです。

悔い改めるマグダラのマリア

画像_ジョルジュ・ド・ラ・トゥール「悔い改めるマグダラのマリア」

効果的に明るさと暗がりを取り入れることで、カトリックで「罪深き女」とされたマグダラのマリアの悔悛を表現しています。

プロフィール

生まれや環境

ジョルジュ・ド・ラ・トゥールは生まれ育ちについての確かな情報があまりない画家です。

ラ・トゥールは、バロック時代に活躍はしていたものの、その後のロココ美術の興隆などで一気に忘れ去られてしまった画家でしたが、20世紀初頭に「再発見」されました。

それまで別の画家の作品だったと思われていたものが、この再発見によってジョルジュ・ド・ラ・トゥールの作となったものもあったそうです。

その後、ラ・トゥールの研究が後続し、国王ルイ13世から「国王付画家」としての称号も得ていたことが分かりました。

ほとんど画家の人間性が読み取れる記録が残っていないものの、有力者に揉み手をして取り入り、また、税金の支払いを拒んだ記録もあり、恐ろしくケチでスネ夫的な人物だったのかもしれません。

作風

画面の大部分が黒い絵

ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの生まれた街であり、また、彼が活躍した場所でもあるロレーヌという街は、大都市であるパリやローマとはちょっと違う、個性的な画家がいる土地だったそうです。

当時ローマで活躍をしていたニコラ・プッサンという画家は、激しい明暗などのバロック美術の特徴が抑えられた古典主義的な絵画が多い画家でしたが、そのプッサンの絵画と比べるとラ・トゥールはとても挑戦的な絵画を描いているように思います。

その挑戦的な画家、ラ・トゥールの作品の最大の特徴ですが、それは他の画家と比べても画面の中を占める「黒」の割合が多いところです。

これはキアロスクーロという技法で、要するに大胆な明暗のコントラストをつけることで作品を演出する技法です。ラ・トゥールはこの技法を駆使して静かで神秘的な宗教画を描いたことから「夜の画家」とも呼ばれています。

また、これも特徴的ですが、画面の中でこちらに背を向けて描かれた人物が多いということも、とても実験的な試みだと思います。やはり当時は、聖人などメインで描かれる人物像は真正面でないにしても、後ろを向いているなんてことはなかったわけですから。

では、彼の描いた黒について次でお話ししましょう。

 

静かな暗がりの「黒」

ラトゥールの黒には二つの黒があると私は考えており、その一つ目が、闇と光の対比で暗がりを表現するための黒です。

これは代表作の「聖ヨセフ」などからもうかがえますが、ロウソクの光との対比によってできた闇は、恐怖や張り詰めた雰囲気ではなく、静かで神秘的な雰囲気を作り上げています。

この表現は主に宗教画で活かされましたが、ロウソクやたいまつの白やオレンジの光が作り出す光と闇が、見事にその宗教的な精神性を演出しています。私の知る限り、黒を使った画家の中で、ラ・トゥールほどの見事な演出家はいないと思います。(光と闇を扱った画家としてはレンブラントが有名ですが、個人的にはラ・トゥールを推したいですね…。)

張り詰めた空気感としての「黒」

ラトゥールのもう一つの黒は、張り詰めた空気感を演出するための黒です。

接点があったという記録こそありませんが、この黒はたぶんラ・トゥールより20歳ほど先輩の画家、カラヴァッジョの影響があると思われます。

前景として描かれた人物たちに対し、後景を全て黒で塗りつぶすように描くことによって、不穏で緊張感のある空気を演出することに成功しています。

この手法は、代表作の「いかさま師」のような教訓めいた風俗画で使われているように思います。

ここまで紹介したように、ラ・トゥールは黒という色によって過激なほどドラマティックな明暗の演出をおこなう画家であり、もちろん明暗の表現を抑えた作品も中にはありますが、やはり魅力的なのは光と闇の対比をよりはっきりと表現している作品のように思います。