ジョヴァンニ・ベリーニ


プロフィール

生誕/死没

1430年頃?~1551年頃

イタリア

代表作

ピエタ

画像_ジョヴァンニ・ベリーニ『ピエタ』

レオナルド・ロレダン

画像_ジョヴァンニ・ベリーニ『レオナルド・ロレダン』

聖母子(牧場の聖母)

画像_ジョヴァンニ・ベリーニ『牧場の聖母』

プロフィール

生まれや環境

ジョヴァンニ・ベリーニは、ヴェネツィア派の始祖である父・ヤーコポの次男であり、兄・ジェンティーレや、妹婿のアンドレア・マンテーニャも画家という、ヴェネツィアきっての画家一家に生まれました。

ゴシック期、ルネサンス期の絵画は、都市ごとに様々な特徴があり、それぞれ都市名を冠して○○派と呼ばれます。ヴェネツィア派もその中の一つで、人物のデッサンよりも、色彩の豊かさや画面の流れなどを重視し、人々に感覚的に訴えかける絵が特徴の流派です。

父・ヤーコポが始祖とはいえ、一般的には兄・ジェンティーレとジョヴァンニこそがヴェネツィア派を確立させた巨匠と言われています。

ジョヴァンニは、主にキリスト教画と肖像画を描いた人物でしたが、自然の風景を詩情豊かに織り込んだ絵が特徴です。

そのジョヴァンニの絵のスタイルを引き継ぎ、ジョヴァンニの工房から羽ばたいていった画家として、レオナルド・ダ=ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロと並んで『四大巨匠』と呼ばれることもある、ティツィアーノ・ヴェチェッリオや、夭折の天才画家、ジョルジョーネがいます。

このように、16世紀にヴェネツィア派を牽引した巨匠たちを生んだという意味でも、ジョヴァンニの存在は大きかったと思います。

ジョヴァンニは当時としてはかなり高齢まで生きており、生年は正確には不明ですが、80代と思われる最晩年にも筆力は健在で作品を残し続けたと考えられています。

また、これはジョヴァンニに関する豆知識ですが、カクテルの『ベリーニ』は、ジョヴァンニの名前からとられています。ヴェネツィアにあるバーのオーナーが、ジョヴァンニ・ベリーニの展覧会の際に作ったことから、ジョヴァンニの名前がついています。

Bellini-Cocktail

カクテル『ベリーニ』

作風

様々な様式を取り入れて確立したヴェネツィア派

ジョヴァンニ・ベリーニは画家一家に生まれたこともあり、画業をおこなうにはとても恵まれた環境だったと考えられます。特に若い頃は、妹婿であるアンドレア・マンテーニャからの影響が色濃く見えます。

マンテーニャは、ヴェネツィアのすぐ近隣の町の流派であるパドヴァ派の画家で、まるで彫刻のような硬質な線と、遠近法を駆使した制作スタイルが特徴です。

代表作として挙げた『ピエタ』は中でも”マンテーニャ的”で、この絵からはあまりヴェネツィア派らしい色彩や柔らかさは見られません。画材も当時すでに確立されていた油彩ではなく、テンペラを用いて制作しています。

また、この頃はフランドル絵画的な細密描写へのこだわりも見られ、全体よりは細部を意識して描いていることがうかがえます。個人的には、『ピエタ』で描かれているキリストの腕の浮き出た血管や、衣服の皺などからそれを感じますね。

また、同様に代表作として挙げた『レオナルド・ロレダン』の肖像画からも、衣服の刺繍や肌の皺から緻密な筆致がうかがえます。

しかし、大工房の主として活躍しだす40代頃から、ジョヴァンニの作風はガラッと変わっていきます。

まず、それまで用いていたテンペラをやめ、油彩を用いた制作を開始します。

先ほど、フランドル絵画の特徴として細密描写の話をしましたが、フランドル絵画のもう一つの特徴は油彩技法にあります。ジョヴァンニはそれを取り入れつつ、一方で細密描写から離れて、ヴェネツィア派らしい全体を把握しまとめる描き方を進めていきます。

そうして各流派の良さを取り入れつつ、徐々にヴェネツィア派のアイデンティティーを確立していったのです。

自然の中の人物たちを描く

当時はまだ風景画というジャンルが確立しておりませんでしたが、ジョヴァンニ・ベリーニは風景画の名手とも言われています。

ジョヴァンニが、フランドル絵画の油彩技法とヴェネツィア派本来の全体把握を重視した描き方を融合させていってからは、それまで以上に風景部分へのこだわりや技術の高さが見られるようになります。

代表作として挙げた『聖母子(牧場の聖母)』と『ピエタ』を比較していただければ、風景部分における扱いの差は一目瞭然かと思います。

また、代表作としては挙げていませんが、ギリシャ神話をモチーフにした『神々の祝祭』はかなり引きで風景が大きく入るように描かれており、また、ジョヴァンニの作品の中でもとりわけ強い色彩を感じられる作品となっています。

実は、『神々の祝祭』は背景部分を弟子のティツィアーノが描いているため、より強くヴェネツィア派らしさが出ているのですが、そもそも神々たちを自然の中に描くというモチーフを選択しているところから、やはりジョヴァンニ・ベリーニという画家はヴェネツィア派を確立しより高みへと推し進めた画家であると言えるでしょう。