ヒエロニムス・ボス


プロフィール

生誕/死没

1450年頃~1516年

オランダ(当時はネーデルラント)

代表作

快楽の園

画像_ヒエロニムス・ボス「快楽の園」

奇々怪々な人物や生物たちが数多く描かれている作品。ボスの著名な作品は当時流行していた三連祭壇画の形をとっているものが多いです。

干し草車

画像_ヒエロニムス・ボス「干し草車」

左右と中央の絵の間が白く抜けているのは、画像上そうなっているだけで、実際は「快楽の園」同様パネルに取り付けられた祭壇画です。

最後の審判

画像_ヒエロニムス・ボス「最後の審判」

左側の平和な感じとうって変わって、中央の絵では訪れた終末の様子と人々を天国と地獄でより分けるイエス・キリストが描かれています。

プロフィール

生まれや環境

ネーデルラントのス・ヘルトーヘンボスという町に生まれたヒエロニムス・ボス。本名は「イェルーン・ファン・アーケン」と言います。ボス(またはボッシュ)と呼ばれるのは、作品に”Bosch”とサインを入れていたことに由来します。これは生まれ育った町「ス・ヘルトーヘンボス」のボスではないかと言われています。

「美術史上の突然変異」とまで言われる奇才ですが、彼のミステリアスさを助長するかのように、ボスの人生についてはほとんどのことが明らかになっておりません。それゆえ、その謎めいた画家像に魅せられて研究する人は数多くいる印象です。

さておき、ボスは画家一族に生まれ、絵画の手ほどきも父から受けたと言われています。熱心なキリスト教徒で、裕福な家庭の娘と結婚し、街のキリスト教団体「聖母マリア兄弟会」に所属したようです。ボスは主にその「聖母マリア兄弟会」からの依頼で絵画を制作していたようです。

ですが、そのキリスト教世界を描きつつ物事の本質を突く独自性の強い作品に、ネーデルラント国内だけでなく、諸外国から大人気となりました。特にスペイン国王のフェリペ2世はボスの作品が大好きでたくさん集めていたようです。(残念ながら、16世紀の宗教改革で失われてしまったものが多いようですが…。)

作風

近寄るな危険!不気味すぎる絵画

三連祭壇画の3つを代表作に挙げましたが、ぜひ顔を近づけて見てみてください。ボス独特のセンスと気味の悪さが分かることでしょう。記事内では諸事情あってあまり大きなサイズで画像を載せておりませんが、wikipedia等ではもっと拡大して見ることができますので、是非試してみてください。

三連祭壇画は主に左から右へ向けてストーリーが進行していきます。その順に従って見ていくと、「快楽の園」はアダムとイヴの楽園追放の場面を描いているものなので、まず左側は平穏安泰なアダムとイヴの様子が描かれています。ここの時点で既に不思議なオブジェのようなものが描かれていますが、ゾウやキリンと思しき動物の姿も描かれていて、ちょっと独特な雰囲気の絵だな~という感じです。

聖書を知っている方であれば、アダムが「知恵の樹の実」を食べてしまったことで2人とも楽園追放の憂き目に遭うことはご存知でしょう。となると、中央で描かれるのは…と祭壇画の中央のパネルに目を向けると、そこには異様な光景が広がっています…。

いったい何人いるのか分からない人、人、人!男の人も女の人も、白色人種も黒色人種もいます。その人間たちが、積み重なるように馬に乗ったり、変な殻の中に入ったりしています。人間以外の動物もいくつかは見たことのある姿をしたものが描かれていますが、半魚人が描かれたり、猫のような馬のような不思議な生物が描かれたり、とにかく説明のできない童話的な気味悪さがあります。

そして、よ~く見ると、あの金田一耕助シリーズの犬神家の一族でお馴染みの、あのポーズをとっている人間までいます。まさか500年も前に犬神家をやっている絵を描いている画家がいようとは…!

シュルレアリスムを400年先駆けた奇才

ヒエロニムス・ボスの存在はまさに「美術史上の突然変異」でした。いかにルネサンス美術がそれまで凝り固まっていた中世の教会美術から解放され、人間のために人間や自然を描く絵画に変わったからといって、ボスのような自由な想像力で奇っ怪なイメージを描いた画家は他にいません。

この幻想的で不思議なイメージの数々は、後の画家、特にピーテル・ブリューゲル(父)辺りが強く影響を受けていますが、それでもボスほどの奇っ怪さではありません。ヒエロニムス・ボスの独特な世界観と肩を並べられる画家が出現するのは1900年代になってからでした。そう、シュルレアリストたちです。ルネ・マグリットやサルヴァドール・ダリ、マックス・エルンストといったシュルレアリスムの画家たちは、夢に出てきそうな奇っ怪なイメージをビジュアル化した絵画をたくさん作りましたが、ボスの絵画はそんなシュルレアリストたちの絵画と並べて置いた方がルネサンス美術の絵画よりよっぽど近い気がします。