ファン・デル・パーレの聖母子
誰が描いた絵?
ヤン・ファン・エイク
いつどこで描かれた絵?
1436年、フランドル(現在のベルギー、オランダ、フランス)
何が描かれている?
中央に描かれている女性は「聖母マリア」。そして、彼女が抱いている赤ちゃんが「イエス・キリスト」である。
絵の一番右側に描かれているのは、依頼主ファン・デル・パーレの守護聖人「聖ゲオルギウス」。騎士の甲冑に身を包んでいる。
一方で、左側に描かれているのは、ファン・デル・パーレが後に埋葬されることになる、ブルッヘ聖堂参事会の守護聖人「聖ドナトゥス」である。
聖ゲオルギウスの脇でうやうやしくひざまずいているのが依頼者のファン・デル・パーレである。
何のために描いた絵?
キリスト教の聖職者であるファン・デル・パーレから「自分のお墓に飾る祭壇画ように描いて欲しい」と依頼を受けて、ヤン・ファン・エイクが描いた。
どうやって描いた絵?
オーク材に油彩で描かれている。
この絵の見どころ
手を伸ばして触りたくなるような写実的な絵
やはり初期ルネサンスの巨匠、ヤン・ファン・エイクの徹底した写実が見どころです。
額の中に空間が広がっているように見える奥行き感は思わず手を伸ばしたくなる感じですね。
そして何よりすごいのが、聖母マリアや聖ドナトゥスが身にまとっている衣服の生地の質感。
実際に触ったときの感触まで感じられそうです。
依頼主に対する人間的な親しみとキリスト教世界の神聖さを併せもった絵
目の前の神聖な光景に心を奪われたような表情をしている依頼主ファン・デル・パーレ。
自らの生きた証としてヤン・ファン・エイクに絵を依頼した聖職者の丁寧な描き方から、ヤン・ファン・エイクの依頼主に対する歩み寄りが見られます。
それでいながら、豪華な装飾を随所にほどこし、聖母子や聖人たちからは高貴さと神聖さが感じられます。
人のために感情を寄せて描かれた絵でありながら、低俗にならず、むしろ尊さを感じられる絵になっているところに、巨匠ヤン・ファン・エイクの画家としての手腕が見受けられます。