フランス・ハルス


プロフィール

生誕/死没

1582年(1583年などの説もあり)~1666年

オランダ(当時のネーデルラント)

代表作

陽気な酒飲み

画像_フランス・ハルス「陽気な酒飲み」

お酒を飲んで饒舌になり、赤ら顔でこちらを向いて話しかける男の肖像。話し声や笑い声が聴こえてきそうな絵です。

ルネ・デカルトの肖像

画像_フランス・ハルス「ルネ・デカルトの肖像」

あの「我思う、故に我あり」で有名な哲学者デカルトの肖像。教科書などで見たことがあるかと思いますが、これを描いたのがフランス・ハルスです。

リュートを弾く道化師

画像_フランス・ハルス「リュートを弾く道化師」

楽しそうにリュートをかき鳴らす道化師を描いた作品。見事に一瞬の表情や手の動きを捉えています。

プロフィール

生まれや環境

オランダのアントワープで生まれたフランス・ハルスは、すぐに家族でハールレムへと引っ越します。

ハルスが芸術家のギルド「聖ルカ組合」のメンバーに入ったとき、彼は27歳でした。この年齢は当時の画家としてはわりと遅咲きでしたが、そのことでハルスは、彼より数十歳年下のレンブラントと同時期くらいに活躍することになります。

フランス・ハルスは「聖ルカ組合」に入った頃から風俗画を描き始めました。また、彼は生涯ハールレムを拠点とし、肖像画を専門として描き続けました。一つの専門を持つことは、当時のオランダの画家たちではよくることだったので、ハルスもそうしたのでしょう。日常の一瞬間を切り取る手法は、当時のオランダの風俗画家たちに共通した特徴です。

プライベートの方では、2回の結婚を経て、14人の子どもをもうけました。そしてそのうち5人が彼の弟子になったようです。

代表作には入れなかったのですが、彼の仕事の中でも特に名誉あるものが「射撃隊組合」の集団肖像画です。彼は合計で5回もの発注を受け作品制作をしたようです。ちなみにこの射撃隊組合は、ハールレムの町を守る自警団的なものだったそうです。

ハルスは、基本的には有力者たちからの発注を受けて仕事をおこなっていましたが、時には自ら主題を選び、たとえば酔っぱらいの男や、子ども、一般の女性などを描くこともありました。

作風

ミスター・肖像画

先にも述べたように専門を決めて画家をおこなうことが多かったネーデルラントにおいて、フランス・ハルスが肖像画を選んだことは必然であり、幸運だったと思います。私がフランス・ハルスのことをここまで言うのには理由があります。

描写力がある画家はハルスと同時代にもそれ以前にもたくさんいましたが、ハルスがもっとも秀でている部分は、その人物の声や態度まで見えてきそうな表情と動き、これを表現する能力だと思います。それこそが、私が彼が肖像画家でいてくれて良かったと感じている点です。もしも私が同時代の人間であれば、是非とも彼に私の肖像画を描いて欲しかったです。

そうそう、もう一つ私が彼に肖像を描いて欲しいと思った理由がありました。それは、彼が笑顔の肖像画をたくさん残している「笑いの画家」だからです。

通常、多くの肖像画は権威ある人物が自らの権威を示すために画家に描かせるものでした。力ある者たちはもちろん、笑い顔というよりは引き締まった凛々しい顔や強くたくましく見えるような姿勢を求めるわけで、多くの肖像画がそのように権威的に描きました。

しかし、フランス・ハルスはそういう肖像画だけでなく、キャンバスから人間味があふれ出てくるような絵、特にそれがダイレクトに伝わる肩の力が抜けた自然な笑顔の絵を描きました。

私の知る限り、ここまで自然体な人々の笑顔を描ける画家はいないと思います。そこも私がハルスに惹きつけられる理由の一つなのです。

彼の絵に同じように惹きつけられる方もいらっしゃるのではないでしょうか?そういう方は、「オランダ風俗画」をテーマにした展覧会等へ行かれると、実際のハルスの絵を見ることができるかと思います。

天才ならではの描き方

人間の瞬間的な表情は身振りを捉えるのが非常にうまかったフランス・ハルスでしたが、どのように絵を描いているかご存知ですか?

一般的な同時代の油彩技法を使う画家たちは、だいたいがまずグレーやピンクなどで下塗りをし、チョークなどでデッサンをおこない、その後ようやく油彩で色を乗せていくやり方で絵を描いていました。

一方のハルスは、アラプリマ(直描技法)と呼ばれる、一発書き的な手法で絵を描いています。要するに、下塗りやデッサンの肯定を飛ばし、いきなり色を置いて描きだしていくのです。

絵を描かれる方であれば、このやり方の凄さが分かると思います。もし普段絵を描かない方でも、学生時代を思い出してみてください。ハルスがやっていたのは、鉛筆で下書きを描かずにいきなり絵筆を使って描き始めることです。すごいですよね。笑

とんでもなく卓越したデッサン力と度胸がなければ、このようなことは出来ないかと思います。

このアラプリマという技法は、ハルスが生み出したものではなく、既におこなっている画家もいたものでしたが、それを権力者から発注を受けた作品でもやってのけるのがフランス・ハルスのすごいところです。

他の肖像画を描く画家は長い時間をかけて描き、依頼者が亡くなってしまうこともあったよう(それってどうなんでしょう。笑)ですが、フランス・ハルスは色を直で乗せていくアラプリマを駆使して、依頼を受けてからわりに早く作品を納品できていたようです。