リバプール国立美術館所蔵「英国の夢 ラファエル前派展」@Bunkamura ザ・ミュージアム


英国の夢 ラファエル前派展

展示概要

期間

2015/12/22(火)~2016/3/6(日)

※1/1(金・祝)・1/25(月)休館

場所

Bunkamura ザ・ミュージアム

住所: 東京都渋谷区道玄坂2-24-1

連絡先: 03-3477-9252

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見どころ

ラファエル前派って?

「どんな流派か知らないから簡単に知りたい!」という方は、こちらの記事が参考になりますよ。

本展示の特徴

本展示は、ラファエル前派展と名がついているものの、実際にはラファエル前派に所属していない画家たちの作品もたくさん展示されています。

ラファエル前派自体は、ゲイブリエル・ロセッティ、ジョン・エヴァレット・ミレイ、ウィリアム・ホルマン・ハントの3人で結成したものの、すぐに解散してしまった流派(というよりは、志を同じにするゆるい画家グループぐらいの感じでしょうか)なので、本展示ではむしろ、彼らの意志を継ぎ、ラファエル前派の目指した写実的でつつましいながらロマンを感じる絵画が展示されています。また、アカデミー側でありながら、ラファエル前派と似た古典的主題を好んで描いた画家の作品も展示されており、「主題が古典的な絵画」の美術展といった趣です。

なお、ここで言う「古典的」は、ロイヤル・アカデミーが「これが模範」と定めたルネサンス美術の巨匠ラファエロよりも、前の美術を指します。

西洋絵画の歴史は宗教画の歴史と言っても過言ではないほど宗教画の作品が多いですが、本展示は主に古代ギリシャ・ローマ的なモチーフをロマンティックに描いた作品が多数展示されています。

楽しむポイント

ラファエル前派の中でも特に知性的だったロセッティは様々思うところがありラファエル前派という活動を起こしましたし、亡くなるまでずっと自身の芸術的信念を突き通した芸術家でしたが、私個人としては彼の思想、および、ラファエル前派の思想部分が本展の見どころではないと思っています。

ラファエル前派が発足した当時のイギリスは、ヴィクトリア朝全盛期であり、また、産業革命の波で人々の生活が大きく変わった時期でもありました。

ヴィクトリア女王治世下のイギリスは確実に国力を高めていましたし、それを支えていた産業革命によって中産階級の市民が増え、一般の人々の生活レベルでも豊かになっていった時代でした。

ですが、人々は豊かになって余裕ができるとどうしても享楽的になるのが世の常で、お金持ちが増えた結果、風俗的な絵画が蔓延するようになります。画家たちもお金持ちたちに受けるような絵画を描くようになり、ロセッティらは「国の芸術教育の中心であるロイヤル・アカデミーがそれじゃああかんでしょ!」と不満を持ったわけです。

とはいえ、いかにラファエル前派の画家たちが立ち上がったところで、穏やかで豊かで時代であったことは間違いなく、絵画を使って貧民層の生活の窮状を訴えたり、キリスト教を布教するために決められたお題で絵画を描いたりする必要はなかったわけです。

それゆえか、本展示の絵画たちも、古代ギリシャ・ローマを主題として選びつつも、どこか甘く夢想的でロマンティシズム溢れる作品が多いです。

中でもジョン・エヴァレット・ミレイローレンス・アルマ=タデマは、卓越したデッサン力でずっと眺めていたくなるような作品を多数残しており、個人的には是非本物を見ていただきたい画家です。

私は既に本展示を鑑賞しましたが、今回初めて鑑賞したエドワード・ジョン・ポインターという画家や、鳥の巣などの静物画を写実的に描いたウィリアム・ヘンリー・ハントといった、日本ではあまり知られていないもののとても魅力的な作品を残している画家たちも多数おり、私もとてもテンションが上がりましたので(笑)、ラファエル前派きっての画力を持つミレイや、ラファエル前派の意志を正統に引き継いだ人気画家エドワード・バーン=ジョーンズらの作品が好きな方であれば、これまで知らなかった画家に出会えるチャンスでもあると思うので、非常にお勧めの美術展です。