ローレンス・アルマ=タデマ


プロフィール

生誕/死没

1836年~1912年

オランダ(後にイギリスに帰化)

代表作

ヘリオガバルスの薔薇

画像_ローレンス・アルマ=タデマ「ヘリオガバルスの薔薇」

ずっと見ていたくなるような圧倒的な写実性。そして明るくて鮮やかな色合いがアルマ=タデマの作品の魅力です。

見晴らしのよい場所

画像_ローレンス・アルマ=タデマ「見晴らしのよい場所」

紅潮した肌、衣服のひだ、花飾り、果ては、手前で左下を覗き込んでいる女性のサンダルに至るまで、非常に丁寧に描きあげている。

モーゼの発見

画像_ローレンス・アルマ=タデマ「モーゼの発見」

アルマ=タデマにかかればオリエントな雰囲気の絵画もお手の物。国際的な人気を博した画家だけあります。

プロフィール

生まれや環境

オランダ生まれのローレンス・アルマ=タデマは、アントワープのアカデミーで絵画を学んだ後、パリへ移住しましたが、普仏戦争が勃発したことで、同じく画家であった妻の祖国イギリスに渡り、そのままイギリスに帰化した画家です。

1863年に妻と新婚旅行で訪れたイタリアのポンペイ遺跡やその近くの町エルコラーノの建築物などに大きな感銘を受け、彼は歴史画を数多く描き始めます。

ちょうどその時期のイギリスは世界的にも国力がある大国で、イギリス国内は「古代ローマ人にならって世界へ領地を拡大していこう!」という風潮があり、まさに古代ローマなどをモチーフにしたものが流行る土壌がありました。

その卓越した描写力と、きちんと古代史を研究してリアリティーを追究する姿勢、そして華やかで鮮やかな色彩は、またたく間にアルマ=タデマを世界的な画家へと押し上げていきました。

亡くなる数年前には、古代の建築物や装飾を徹底して研究し描いた功績を讃えられ、イギリス王立建築学会からゴールドメダルを授与されています。

ラファエル前派ではない?

しばしば、アルマ=タデマという画家はラファエル前派の1人として数えられることがありますが、ラファエル前派の成り立ちを考えるとそれは間違っているように思います。

というのも、アルマ=タデマは当時のイギリスの芸術の規範を作っていたロイヤル・アカデミーの会員であり、要するにラファエル前派の画家たちが「腐敗している」と反発したアカデミー側の人間だったのです。

ですが、ラファエル前派自体が、創立メンバーの1人、ジョン・エヴァレット・ミレイがロイヤル・アカデミー会員になるなど、わりと短い期間の活動でぐだぐだ…いえ、解散してしまったようなグループだったこともあり、両者は「一切交流を持たない!」ということはなかったようです。

それゆえ、ラファエル前派に加えられることがあるようですが、アルマ=タデマはあくまでラファエル前派と交流を持っていた画家、といったところでしょう。

代わりに、アルマ=タデマはヴィクトリア朝時代の画家と言われます。全盛期のイギリスの理想や華やかさを体現した画風であったことからも、こちらの方がしっくりきますね。

個人的な思いではありますが、西洋絵画の歴史について書かれた一般向けの本などでは、アカデミーにアンチだったラファエル前派の方が多く記述されており、一方のアカデミー側であったアルマ=タデマのような画家は紹介すらされていないことがあるので、悲しいなぁと思います。

Artfans.jpでは、こういった歴史の大波に飲まれてしまったことで、日本ではいまいち知名度が低い当時人気の画家や、今も当時も知られていなかったものの非常に素敵な作品を残した画家などを発掘し、紹介していければと思っています。

 

作風

圧倒的な華やかさと描写力

あまり絵画を見慣れていない人であっても、ローレンス・アルマ=タデマの作品は一度見たら忘れないものになるかと思います。

それくらいに濃度のある豊かな色彩には圧倒されます。

ですが、これは私個人の感想でもあるのですが、アルマ=タデマの画家としての素晴らしさはその総合力だと思っています。

色彩が豊かな画家はたくさんいます。ですが、その色彩の豊かさを支えられるだけの描写力、そして想像だけではなくしっかりとした歴史考証に基づいて描かれた服飾や小物、建築…。これら全てが合わさり、アルマ=タデマの絵画は成り立っていると思います。

ハリウッド映画への影響

1900年代に入ると映画を撮影し映写する技術が開発され、ハリウッド映画の元祖のものがアメリカにどんどん誕生していきます。

その初期のハリウッド映画に影響を与えたのがアルマ=タデマの絵画でした。

物語性を感じさせる歴史のワンシーンを幻想的、かつ、優雅に描いた絵画は、確かに映画との相性が良さそうに思います。

アルマ=タデマの絵画の濃密な色合いは、1900年代の映画と言わず、現代の映画にも未だに影響を与えているように感じるのは私だけでしょうか。