「ロマン主義」を分かりやすく解説!

「ロマン主義」を分かりやすく解説!

今回はロマン主義について解説していくわね。

ロマンって言葉は現代日本人にも馴染みがあるよな!
現代人のうちらがイメージする「ロマン」と関係しているのかな?

「ロマン主義」の代表作は?

まずは代表作を見ていきましょ。

ウジェーヌ・ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」
ウジェーヌ・ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」
1830年/ルーヴル美術館(フランス)所蔵
フランシスコ・デ・ゴヤ「我が子を食らうサトゥルヌス」
フランシスコ・デ・ゴヤ「我が子を食らうサトゥルヌス」
1819〜1823年/プラド美術館(スペイン)所蔵
フランシスコ・デ・ゴヤ「マドリード、1808年5月3日」
フランシスコ・デ・ゴヤ「マドリード、1808年5月3日」
1814年/プラド美術館(スペイン)所蔵
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー「雨、蒸気、速度――グレート・ウェスタン鉄道」
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー「雨、蒸気、速度――グレート・ウェスタン鉄道」
1844年/ロンドン・ナショナル・ギャラリー(イギリス)所蔵

うーん、ロココ美術とか新古典主義のような、分かりやすい特徴が無い気がするな……。
全体的に暗めで激しい感じはするけど……、

「ロマン主義」の特徴は?

それでは、ロマン主義の特徴を紹介するわね。

「浪漫を感じる」「ロマンチック」と由来が同じ

ロマン主義の「ロマン」は、

・”浪漫”を感じる
・”ロマンチック”な恋

といった言葉と同じ由来を持つのよ。

やっぱりそうだったのか!

ロマンという言葉は、もともとは「ローマ的」という意味だったの。

それが、正統な古典文化を表す「ラテン」という言葉と対比されるようになって、大衆文化を指すようになっていったわ。

ふむふむ……。

さらに、その大衆文化の一部として「ロマンス」という文学ジャンルが確立するの。

この文学ジャンルは大衆向けに書かれ、空想的であることが一つの特徴で、

・恋愛小説
・騎士道物語
・民族叙事詩

といった文学作品が作られたわ。

ロマンスっていったら恋愛っていう印象があったけど、恋愛要素はあくまでロマンスというジャンルの一部のイメージなんだな。

そうね。
で、この「ロマンス」という文学ジャンルがあった上で「ロマン主義」が生まれたのよ。

ってことは、ロマン主義にはロマンスと共通する要素があるのか?

そのとおりよ。

ロマンスの

・理想を追い求める精神
・空想的な世界観


は、ロマン主義にも通ずるわね。

自然への崇拝を個人の主観で表現

ロマン主義の由来がロマンスにあるって分かったから、改めて代表作を見てみたんだけどさ……。

まったく統一感無くね?笑

そうね、確かに統一感がないわね。

それに、パッと見ではどれも理想を追い求めている感じがしないしなぁ。

確かに空想的なものが多い印象はあるけど……。

さっき紹介したロマンスの特徴の表現を変えると、ロマン主義の作品に共通する特徴が見いだせると思うわ。

表現を変える?

理想を追い求める精神
現実(貴族社会や近代科学)を否定し、自然を崇拝

空想的な世界観
個人の主観による表現

と表現を変えてみるとどうかしら?

なるほど、さっきより少し分かりやすくなったぜ!

個人の主観によるから、描かれているものや描き方が画家によってバラバラなんだな〜。

ちなみに、ロマン主義の芸術家たちの言う「自然崇拝」は、
「堅苦しい規則や法則は取っ払おう!」
という気持ちの現れだったの。

これは、規則や法則に従って完璧な美を作ろうとした新古典主義に反発した結果よ。

なんだかルネサンス美術のときと似たような動向な気がするぜ!

改めて美術の潮流は、前の時代の潮流への反発で生まれることが多いんだなぁ。

貴族社会と近代科学に反発

ロマン主義の作品の特徴を理解するには、時代背景を理解することが重要になるわ。

18世紀末から19世紀前半のヨーロッパだな!

ロマン主義の芸術家たちは大きく分けると二つのものに反発したわ。

その一つが貴族社会よ。

新古典主義の記事でも触れたけど、18世紀末は市民が貴族を打ち倒したフランス革命が起こったんだよな。

そうね。

ロマン主義は新古典主義と時期的にやや重なっているの。
なので、新古典主義の記事と照らして読むとより時代背景が分かると思うわ。

新古典主義が衰退する中でロマン主義が台頭した感じだよな!

ところで、新古典主義とロマン主義ってどう違うんだ?

新古典主義もロマン主義も貴族社会に反発していたのは一緒ね。

でも、新古典主義が理性的な表現だった一方で、ロマン主義は画家の感情が乗った表現になっているのよ。

それが新古典主義とロマン主義の大きな違いね。

確かに、代表作にもあるドラクロワの「民衆を導く自由の女神」は、フランス市民の
「革命で自由を勝ち取ったぞ!」
という感情が生き生きと表現されているよな!

きっとドラクロワも市民に自分の気持ちを重ねていたんだろうなぁ。

ウジェーヌ・ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」
ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」。
たくさんの同志の死を乗り越えて、自由を勝ち取った市民たちの鬨の声が聞こえてくるよう。

ロマン主義の芸術家が反発したもう一つのものは、近代科学よ。

これは、18世紀半ばから19世紀にかけてイギリスで起こった産業革命の影響が大きいわね。

産業革命はどんな革命だったんだ?

簡単にまとめると、

・手工業に替わる機械の発明
・鉄道や蒸気船の出現による交通革命
・資本主義社会(※)の誕生


という特徴があるのが産業革命ね。

※資本主義社会:資本(としての生産手段)を持つ資本家が、労働者から労働力を買い、それを上回る価値のある商品を生産し、利益を得る仕組みに立脚した社会のこと。

産業革命のときに誕生した蒸気船のイメージ画像。
産業革命のときに誕生した蒸気船。

ロマン主義の芸術家は産業革命による近代化にも反発したんだな〜。

新しい技術が生まれることは、別に悪いことではない気がするけどな?

そう思うのも分からなくないけど、ロマン主義の芸術家たちが近代科学に反発したのは、現代の私たちが

「AI(人工知能)に仕事とられちゃうかも……!」
「SNSで社会の在り方が大きく変わったよね……」

最新の技術に対して恐怖心を抱くのと同じ感覚だったんじゃないかしら。

そう言われるとちょっと分かるかも……。

確かに、つい数年前まで馬車に乗っていたのに、いきなり鉄の塊に乗って遠くまで移動できるようになったわけだしな……。

でしょ。

あっ!
もしかして、代表作にあるターナーの「雨、蒸気、速度――グレート・ウェスタン鉄道」は、
一気に機械化が進んでいく社会に対する恐怖心
を表しているのか?!

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー「雨、蒸気、速度――グレート・ウェスタン鉄道」
ターナーの「雨、蒸気、速度――グレート・ウェスタン鉄道」。
鉄道そのものを明確に描くのではなく、スピード感やパワーから来るイメージをそのまま描きだした。

歌琳さん、ご名答♪

ただ、ターナーは鉄道の出現を否定的に捉えたのではなく、走る鉄道を体感した衝撃をそのまま作品にしたのだ思うわ。

なるほどな〜。
こういう時代背景があったからこそのロマン主義だったんだなぁ。

「ロマン主義」が見れる場所は?

日本国内で、ロマン主義の作品がまとめて展示されている場所は残念ながら無いわね。

だから、ロマン主義についてもっと知りたい!っていう人は、書籍や画集を購入するのがおすすめだぜ!

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