今回はバルビゾン派について解説するわね。
バルビゾン派!
……なんか語感がいいから何回も言いたくなるな。
バルビゾン派!!笑
「バルビゾン派」の代表作は?
コホン……。笑
では、気を取り直してバルビゾン派の代表作について紹介するわね。

1857年/オルセー美術館(フランス)

1857〜1859年/オルセー美術館(フランス)

1864年/ルーヴル美術館所蔵(フランス)
ミレーの作品は、日本人だったらほとんどの人が知っているかもな!
「バルビゾン派」の特徴は?
それでは次にバルビゾン派の作品の特徴について解説するわ。
バルビゾン村に住んだ芸術家たち
そもそも「バルビゾン」って何なんだ?
バルビゾンというのはパリ近郊にある村の名前よ。
バルビゾン村の一画にあるミレーのアトリエ。
参照:画家ミレーが愛したパリ郊外の田舎バルビゾン村の行き方・見どころ・観光ガイド | Jams Paris
じゃあ、バルビゾン派の芸術家たちは、そのバルビゾン村に住んでいたのか?
そのとおりよ♪
バルビゾン派は、パリ近郊にあるフォンテーヌブローの森を愛し、その森の入り口にある村「バルビゾン村」に住んだ芸術家グループのことなの。


なるほどな〜。
じゃあやっぱりバルビゾン派の芸術家たちは、自然とかが好きでそれを描いていたのか?
それも、そのとおりね。
バルビゾン派の画家たちは、フォンテーヌブローの森の風景画を描いたり、農村の風景や農民たちの様子を描いたりしたのよ。
やっぱりそうなんだな!
確かに代表作を見ていても、森の絵か農村の絵だもんな〜!
このバルビゾン派には、「バルビゾンの七星」と呼ばれる代表的な画家が七人いるのよ。
・コロー
・ミレー
・テオドール・ルソー
・トロワイヨン
・ディアズ
・デュプレ
・ドービニー
の七人ね。
ジャン=バティスト・カミーユ・コロー「フォンテーヌブローの森の眺め」 ジャン=フランソワ・ミレー「落穂拾い」 テオドール・ルソー「バルビゾン村の風景」 コンスタン・トロワイヨン「浅瀬」 ナルシス・ディアズ・ド・ラ・ペーニャ「フォンテーヌブローの森」 ジュール・デュプレ「カシの老木」 シャルル=フランソワ・ドービニー「バルビゾンに上る月」
代表作を描いたコローやミレーも入っているな!
にしても、全員の描いた自然の絵を並べると圧巻だな〜!
自然崇拝と労働讃歌
そんな自然大好きなバルビゾン派の作品にはどんな特徴があるんだ?
まず特筆すべきは、バルビゾン派が写実主義と同じ時代に同じフランスに存在した芸術家グループであることね。
おお、そうだったのか!
あるがままの現実を描くという点では、バルビゾン派も写実主義も同じなの。
確かにバルビゾン派の描く風景は、それまでのヨーロッパでは当たり前だった歴史画や神話画の風景と違って、現実にある森や農村を題材にしているもんな!
そうね。
ただ両者にも違いがあって、「現実」の捉え方が少〜し違うのよ。
どう違うんだ?
写実主義は、
「今この社会をとりまく現実をみんなに知らしめてやる!」
という社会に対するメッセージ性の強さが感じられるわね。
一方のバルビゾン派は、
「自然を讃え、その自然の中で働く農民たちの慎ましさも讃えましょう」
という自然崇拝と労働讃歌の考え方が根底にあるのよ。
確かに……!
どちらも当時の現実を写しとったものではあるけど、捉え方が違うな〜!
外光の下で描かれた写実絵画
バルビゾン派は自然を描いていただけあって、外光の下でどれだけそのままの自然を描けるかにこだわったわ。
おお〜、さすがだぜ!
これまでの絵画は、室内にモデルを配置して描いたり、風景は想像にお任せで描いたりしていることが多かったのよ。
バルビゾン派の画家たちは外へ出て、実際の風景を目の前にして描いたの。
なるほどな〜。
だから、リアリティーがあるのか〜。
ん?
でも、なんでバルビゾン派以前の画家たちは外で描こうとしなかったんだ?
本物を見ながらの方が上手に描けそうじゃん。
実は、バルビゾン派以前の画家たちは屋外で作品を制作しづらい事情があったのよ。
え?!
どういうことだ?!
実は19世紀以前は、持ち運びできるチューブ入り絵の具が存在しなかったの。
え〜〜っ?!
チューブ入り絵の具が登場したのは1841年。
これによって、屋外でイーゼルを立てて実物を見ながら絵を描くことが可能になったのよ。

同時代の美術の潮流、写実主義、バルビゾン派、ラファエル前派がこぞって「あるがままの自然」を描こうとしたのは、チューブ入り絵の具の誕生で制作の幅が広がったことも大きいんだな〜!
実は日本人に大きな影響を与えている
実はバルビゾン派の存在は、日本にもさまざまな影響を与えているのよ。
へ〜、そうだったのか!
まず、黒田清輝、久米桂一郎、河北道介、浅井忠といった日本の洋画家たちが、フランスに留学した際にフォンテーヌブローの森を訪れているの。
現地に学びに行った日本人の画家がいたんだな〜。
訪れたのはバルビゾン村ではなくグレー村という別の村だったわ。
でも、南画(文人画)を通じて風景画の素養があった日本人画家たちにとって、バルビゾン派からは多くの学びがあったわ。
南画(文人画)は、中国由来の画派で、山水画(ヨーロッパで言うところの風景画)を扱うことが多かったんだよな〜。
他にも日本への影響はあって。
プロレタリア文学の作家だった小牧近江や金子洋文は、「種蒔く人」という同人誌を発刊しているわ。
その同人誌の名前、もしかしてミレーの「種まく人」からインスピレーションを得ているのか?

大正解♪
ちなみにこの「種まく人」は、岩波書店の商標にも使われているのよ。
岩波書店の種まく人のマーク。
参照:「種まく人」のマークについて – 岩波書店
岩波書店創業者の岩波茂雄は、篤農家(※)の家の出身で、「労働は神聖である」という考えを強く持っていたみたいだな〜。
だから「種まく人」に共感する部分が大きかったのか。
※篤農家:農業の研究・奨励に熱心な人。
「バルビゾン派」が見れる場所は?
実は山梨県立美術館は、「ミレーの美術館」として親しまれているくらい、バルビゾン派の作品を多く所蔵しているわ。
国内でバルビゾン派の作品をまとめて鑑賞したいなら、山梨県立美術館はおすすめだな!
ちなみに山梨県立美術館は、さっき紹介したボストン美術館所蔵のものとは別バージョンの「種まく人」を所蔵しているのよ。
すごい!
もし、鑑賞するだけでなくもっとバルビゾン派のことを知りたいという方がいたら、書籍や画集を購入するのがおすすめよ。