今回は現代美術家「草間彌生」を紹介するわ♪
水玉の人だ!!
そうね、多くの人は「水玉模様の作品を作る人」という印象があると思うわ。
「草間彌生」の代表作は?
とりわけ、香川県の直島にある作品を知っている人は多いでしょうね。
直島は「アートの島」として、人気の観光地だな!
草間彌生「赤かぼちゃ」
1994年/直島(香川県)
参照:直島 | 瀬戸内国際芸術祭2019
草間彌生「黄かぼちゃ」
1994年/直島(香川県)
参照:草間彌生「かぼちゃ」への行き方・見どころを紹介!直島アート観光 | thisismedia
「草間彌生」はどんな人?
それでは、草間彌生がどんな人物か紹介していくわね。
歌琳さんは、草間彌生というアーティストに対してどういうイメージを持っているかしら?
うーん、最初にも言ったとおり、やっぱり「水玉の作品を作る人」っていうイメージが強いな!
うちはあの水玉がたくさんある感じ、ゾワゾワしちゃってあんまり得意じゃないんだけどな……!
水玉を描く理由
「あんまり得意じゃない」という気持ちも分からなくもないわね。笑
ただ、実を言うと草間彌生自身も水玉を好んで描き始めたわけではないのよ。
え?じゃあなんで水玉を描いてんだ?
「統合失調症」という病に立ち向かうためよ。
統合失調症ってどんな病気なんだ?
すごく簡単に言うと、存在しないものが見える幻視や存在しない人の声が聞こえる幻聴などで、正常な生活を送ることが困難になる病気なの。
それは大変そうだな……。
1929年3月22日に長野県松本市に生まれた草間彌生は、幼いころから統合失調症の幻覚に苦しんだわ。
とりわけ彼女は世界が水玉だらけに見えていたのよ。
それに立ち向かう手段として、10歳のころから水玉を描くようになったの。
草間が10歳のころに描いた母親の姿。統合失調症の幻視の水玉模様に覆われている。
参照:【美術解説】草間彌生「水玉作品で有名な前衛アーティスト」 – Artpedia アートペディア/ 近現代美術の百科事典・データベース
10歳……!
病気と闘うために描いていたのかぁ。
病気だけでなく両親からあまり愛情を注がれなかったことも大きく関わっていたのよ。
草間自身、このように語っているわ。
子どもの頃から、自殺への憧れがすごくありました。家庭環境に悩んで、幻聴や幻視にとらわれてものすごく恐ろしくて、毎日、自殺したいと願うほど追いつめられて。自殺を思いとどまらせてくれたのは、絵を描いたり、作品をつくったりすることだった。
草間彌生が語る、愛とアートに生きる理由。 | Vogue Japan から引用
壮絶だったんだな……。
もはや草間にとって芸術活動は生きることで、生きることは芸術活動だったんだろうなぁ。
渡米したが「日本人女性」がネックに
最初は日本で活動していた草間彌生だったけど、国内ではまったく評価をされなかったの。
「このまま日本でやっていてもダメだ」と考えた草間は、28歳のころに自分の作品を全部燃やしてアメリカへ渡ったの。
自分の作品を全部燃やして……?!
相当な決意だったんでしょうね。
アメリカに渡ってからはどうだったんだ?
評価されたのか?
実は、アメリカに渡ってからも最初のうちはまったく評価されなかったのよ。
なんでだよ?
それには大きく分けて二つの理由があったわ。
一つは、草間がアート後進国の日本出身だったこと。
あぁ……。
今でもアート後進国って言われているしな……。
もう一つの理由はなんだ?
もう一つは、彼女が女性であったことよ。
女の何がダメだったんだ?
アートの世界はずっと男性が中心の世界だったのよ。
もちろん女性の芸術家もいないことはないけど、美術史を見ると驚くほど男性ばかり。
だから、当時は女性が一人で個展を開くことなんて不可能に近かったの。
なるほどなぁ。
うちも女だし、なんかやるせない気持ちになるぜ……。
けれども、そんな逆風の中でも諦めなかった結果、ついに草間が評価されるときが来たの。
お〜!ついに!!
まず、「無限の網」シリーズが目に止まったわ。
無限の網シリーズの一つ。当時のアメリカのアート界にとって、画面を埋め尽くす網目模様という芸術表現は新鮮さをもって受け入れられた。
参照:Infinity Nets Yellow
うぉぉぉ……!
閲覧注意って言いたいぐらい網目模様がたくさん……!
この作品は平面作品だけど、ここから草間は斬新な手法でどんどん作品を発表していくわ。
全米に衝撃を与えた「クサマ・ハプニング」
その一つが「ハプニング」ね。
これは草間の作品名ではなくアートの表現方法の一つよ。
ハプニングってどんな表現なんだ?
ハプニングは、街中などでおこなわれる一回性(※1)の強いパフォーマンスや展示よ。
ちなみに草間がおこなったハプニングはこんな感じよ。
(※1)一回性:一回しかおこなえず、再び同じことができない性質のこと。
草間のおこなった「ハプニング」では、草間の代名詞とも言える水玉模様を人々の体に描きパフォーマンスをおこなった。
参照:YAYOI KUSAMA – FORMIDABLE MAG – Art
水玉模様を描かれた全裸の人が街中に繰り出してパフォーマンスする様子は、当時のアメリカのアートシーンに「クサマ・ハプニング」として鮮烈な印象を残した。
参照:YAYOI KUSAMA – FORMIDABLE MAG – Art
全裸の人の体に水玉を描いて、野外でゲリラパフォーマンス(※2)をしたのか……!
これは確かに衝撃的だ……!
(※2)ゲリラパフォーマンス:事前予告無しに突発的におこなわれるパフォーマンスのこと。
ハプニングはただインパクトがあっただけでないわ。
草間はハプニングの活動を増やしていく中で、ベトナム反戦運動、アメリカ大統領選挙といった社会情勢も取り入れるようになったわ。
ただ奇抜なだけじゃなかったんだな〜。
でも、水玉や網目の反復という強烈なビジュアルは一般大衆にもおおいに受けたの。
草間デザインのアパレルが全米のデパートで販売されたり、草間自身もブティックをオープンさせたりしたの。
すげぇな……!
しかもこれ、たった数年間での話だもんな〜!
大躍進だぜ!
現在でも精力的に活動
草間はアメリカで16年間活動したんだけど、心身の調子を崩したこともあって日本に帰国したわ。
やっぱり日本でも話題になったのか?
そうね、話題にはなったわ。
けど、草間彌生の芸術性ではなく、性的なコンセプトや表現ばかりが取り上げられ好奇の目にさらされたの。
アートだけでなく、日本はあらゆる面で遅れていたんだな……。
それもあって帰国後の一時期はあまり表立った活動をしていなかったのよ。
それでも作品制作は引き続き精力的におこない、小説や詩なども発表していたわ。
多彩だなぁ。
その後は、ニューヨークでおこなった回顧展などを経てより評価が高まり、現在に至るわ。
ちなみに執筆時(2020年11月21日)現在、草間は91歳だけど今も作品制作を続けているわ。
91歳!!
今も活動を続けているなんてすごすぎるぜ……!
「草間彌生」の作品の特徴は?
さて、次は草間彌生の作品の特徴を紹介したいけど……、もうすでに結構触れているわよね。笑
そうだな〜。
草間彌生=水玉って感じもあるし、人間性を語る上では避けて通れないよな。笑
強迫的に反復・増殖する水玉や網
そうね。
確かに水玉のイメージが強いけど、実は水玉だけでなく「網目」のモチーフも多いのよ。
無限の網シリーズの一作品。執拗なまでに同じモチーフを繰り返すところに強迫性を感じる。
参照:Yayoi Kusama | Infinity Nets (1990) | Artsy
これもまたぎっしりだな!
鳥肌立っちまうぜ……!
その「ぎっしり」がポイントよ。
すべての草間作品に通じる最大の特徴が、水玉や網目を反復・増殖していくことなの。
自己消滅を目指した
幻覚と闘うためっていうのは分かるけど、なんでここまでぎっしりさせる必要があったんだ?
それは草間が「自己消滅」を目指したからよ。
自己消滅?
どういうことだ?
草間は、無限に反復、増殖した水玉の中に自分自身を埋没させて世界と自分の境目をなくそうとしたの。
自身を水玉の中に埋没させることによって自己消滅した作品。
参照:自己消滅(網強迫シリーズ)
恐怖から逃れるための究極の手段って感じだな……!
ハプニングの女王
ハプニングについてもすでに触れたけど、草間彌生はニューヨークで「ハプニングの女王」と言われるほどだったのよ。
ちょっと気になったんだけどさ。
ニューヨークには他にもハプニングをやっていたアーティストがいたんだろ?
なんで草間は女王って言われるまでになったんだ?
確かにハプニングという表現をおこなっているアーティストはいたわね。
でも、そもそもハプニング自体が当時とても新しい表現だったの。
そうだったのか!
草間がアメリカで評価されたのは、新しい表現にも先陣を切って挑む姿勢があったのかもなぁ。
インスタレーションの先駆け
草間彌生はインスタレーション作品が多いことも特徴よ。
インスタレーションってなんだ?
インスタレーションは簡単に言うと、空間全体を作品として体験させる芸術のことよ。
草間彌生の実際の作品を見ると分かると思うわ。
参照:Infinity Mirror Rooms – Yayoi Kusama: Infinity Mirrors | Hirshhorn Museum | Smithsonian
うぉぉぉ、水玉模様の物体がたくさん!
……って思ったけど、よく見たら鏡があるから余計に多く感じるんだな!
全面が鏡貼りのミラールームに水玉のソフト・スカルプチャー(※3)を敷き詰めることで、水玉の無限の繰り返しを体験できるのよ。
(※3)ソフト・スカルプチャー:布や糸のような繊維やゴムなどの柔らかい素材で作られた彫刻のこと。
ちなみに、インスタレーションもハプニング同様に最先端の表現だったのよ。
草間はよく前衛的(※4)なアーティストって言われるけど、まさに文字通りなんだな〜。
(※4)前衛的:考え方や態度などが同時代のものと比べて先進的、実験的であること。
「草間彌生」の作品はどこで見れる?
草間彌生の作品はどこで見ることができるんだ?
そうね、国内でもたくさん鑑賞できる場所があるわ。
北から順に箇条書きで書いても、
・十和田市現代美術館(青森県)
・越後妻有 大地の芸術祭の里(新潟県)
・ハラ ミュージアム アーク(群馬県)
・草間彌生美術館(東京都)
・東京都庁 南展望室(東京都)
・松本市美術館(長野県)
・クレマチスの丘 ヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡県)
・直島(香川県)
・福岡市美術館(福岡県)
・霧島アートの森(鹿児島)
とたくさんあるわね。
草間彌生作品を鑑賞する全国ツアーができそうだな!笑
草間彌生自身のことをもっと知りたいっていう方は、草間が自ら著した書籍を読むのもおすすめよ♪
▼ 書籍「無限の網 ― 草間彌生自伝」
▼ 書籍「水玉の履歴書」
文章より映像派の方は、ドキュメンタリー映像もおすすめだわ。
▼ ドキュメンタリー映像「草間彌生∞INFINITY」
あと草間彌生の水玉とか網目の模様が好きな人は、グッズもたくさんあるから見てみるといいぜ!
(うちはあんまり得意じゃないけど!笑)