西洋美術史の始まりの始まり、原始美術について解説していくわ。
アートはどれくらい前からあったんだろう?
気になるぜ!
「原始美術」の代表作は?
まずは原始美術として扱われているものを紹介していくわね。
おお、どれも学校の教科書で見たことがあるものばかりだ!
「原始美術」の特徴は?
歌琳さんは、原始美術の代表的なものをいくつか見てみてどう感じたかしら?
う〜ん、なんかいまいち全体像がつかめないんだよな〜。
「原始美術と言ったらこういう特徴!」っていうのが見えないっていうか……。
「原始美術」は20世紀に生まれた分類
ラスコーとアルタミラは似たような壁画だけど、ストーンヘンジはまた別のものって感じするしなぁ……。
なかなか鋭いわね。
実はそもそもこの「原始美術」という分類自体が20世紀に入ってから生まれたものなのよ。
えっ、そうなのか?!
やっぱりとても古い時代のものだから、見つかっている作品例があまり多くないのよ。
なので、これから発見や研究が進んでいったら、「原始美術」というくくりがなくなったり呼び方が変わったりする可能性があるわ。
なるほどなぁ。
ってことは、この記事の情報も……?
古くなる可能性もあるわね♪
旧石器時代後期ごろの美術
一応現在の区分では、旧石器時代の後期ごろからが原始美術の始まりとされているの。
だいたい3万〜1万年前ごろの話ね。
ひょえ〜〜!
とんでもなく昔の話だな……!
旧石器時代の後期ごろから、生活をする上で必要のない遺物や遺構が出てきたのよ。
どんなものかはこの時代の遺構を見るのが早いと思うわ。
古いものだと「クニャック洞窟の洞窟壁画」や、「ラス・チメネアス洞窟の洞窟壁画」などがあるわね。
「クニャック洞窟の洞窟壁画」
紀元前3万年頃/フランス
参照:Site Officiel des Grottes de Cougnac !
「ラス・チメネアス洞窟の洞窟壁画」
紀元前3万年ごろ/スペイン
参照:Cantabria
最初に紹介した「ラスコー洞窟の洞窟壁画」や「アルタミラ洞窟の洞窟壁画」なども旧石器時代の後期ごろの遺構よ。
旧石器時代は洞窟壁画ばかりだったのか?
そんなことはないわ。
例えば、「ブラッサンプイで出土した象牙彫りの女性頭部像」のような彫刻も出土しているの。
これが2万年前に作られただなんて……!
中石器時代の美術
中石器時代に入ると、洞窟壁画ではなくペトログリフ(岩盤画)が増えてくるわ。
ペトログリフは洞窟壁画とどう違うんだ?
洞窟壁画は黄土や赤鉄鉱、二酸化マンガン、炭などで描画されたものだけど、ペトログリフは岩石や洞窟の壁に削って刻まれたものなの。
描くか彫るかの違いってことか!
中石器時代のペトログリフで知られているのは、スペインの東側沿岸のレバント美術や、スカンジナビア半島からロシア北部の極北美術があるわ。
「イベリア半島の地中海沿岸の岩絵(レバント美術)」
紀元前8,000年ごろ〜前3,500年ごろ/スペイン
参照:UNESCO World Heritage Centre
「極北美術」
紀元前6,000年ごろ〜前2,000年ごろ/スカンジナビア半島・ロシア北部
参照:Wikipedia
新石器時代の美術
新石器時代になると土器が作られるようになって、そこに線状の模様が描かれるようになるのよ。
そして一方で、洞窟壁画やペトログリフは見られなくなるの。
でも、この時期で一番目立っているのは建築。
とてもインパクトの強い建築物がいくつかあるから紹介するわ。
「メンヒル」
紀元前3,000年ごろ/フランス
参照:Wikipedia
ちなみにこの「メンヒル」は、高さ9.5mもあるわ。
きゅ、9.5m?!
うちが6、7人積み上がった高さかよ……?!
(独特な例え方ね……)
「メンヒル」の他にも、アイルランドなどの「ドルメン(支石墓)」や、代表作で紹介した「ストーンヘンジ」なども新石器時代の建築物よ。
なんかどれも岩がドーン!って感じだな……!
そうね。
こういった一枚の大きな岩などで作られた遺物のことを「モノリス」と言うのよ。
きっと聞いたことがある人もいると思うわね。
モノリス?!
映画「2001年宇宙の旅」で出てきた記憶があるぜ!
モノリス(映画「2001年宇宙の旅」より)
参照:BANGER!!!
最古の美術ってどれ?
なぁなぁルネちゃん、さっきからずっと気になっていたんだけどさ。
一番古い美術作品ってどれなんだ?
やっぱりそこは気になるわよね。
旧石器時代の後期ごろから洞窟壁画などが見つかったという話はしたけど、それはあくまで現時点で発見、特定されているものの話なの。
ってことはもっと古いものも……?(ゴクリ)
そうよ。
実は、スペインのラパシエガ洞窟、マルトラビエソ洞窟、アルダレス洞窟で見つかった壁画は、6万4,000年前のものかもしれないと言われているの。
「アルダレス洞窟の洞窟壁画」
紀元前6万2,000年ごろ?/スペイン
参照:国際ニュース:AFPBB News
ろろろ6万4,000年前?!?!
えっ、そのころって人間はいたのか……?
それは、人間をどう定義するかによるわね。
もし、人間=ホモ・サピエンスとするなら、20万年ほど前に東アフリカで生まれた種族なので、存在はしていたわ。
ただ、あくまで「存在はしていた」だけよ。
どういうことだ?
歌琳さん、アルダレス洞窟の所在地はどこかしら?
スペインって書いてあったな。
そう。
スペインはヨーロッパの国だけど、6万4,000年前はホモ・サピエンスたちがヨーロッパまで到達していなかったと言われているの。
えっ?!
ってことは……?
実は人間の前に栄えていた種、ネアンデルタール人が作ったものかもしれない、ということよ。
「原始美術」はアートと言えるのか?
ええ〜〜?!?!
となると、アートを生み出したのは人間ではなくてネアンデルタール人ってことか……?!
それがそうとも言い切れないのよ。
え?なんでだ?
そもそもの話にはなるけど、アルダレス洞窟の洞窟壁画のような原始美術は、はたして本当にアートと言えるのか議論されている最中なのよ。
でも、動物とか人間の絵を描いている時点で、それはアートなんじゃねぇのか?
そう思うのも分かるわ。
でも、もしも絵を描いた目的が「仲間に捕まえた獲物を伝えるため」だったとしたら?
あっ……!
原始美術は「生活をする上で必要のない遺物や遺構」なんだから、生きる行動の一貫として絵を描いたものは美術とは言えないのか……?!
そのとおりよ♪
「おやつは戸棚の中にあるわよ」ということを示すために戸棚と矢印を描いたメモがアートになっちゃうのはおかしい感じがするでしょ?
あるいは、もし壁画を描いた目的が「宗教的な儀式のため」だったとしても宗教が生活と関係ないとは言いきれないわよね。
確かに……。
そもそもアートが何かっていう定義が完全に明確でないと、原始美術がアートかどうか白黒つけることができないの。
アートの定義自体が曖昧だし、原始美術がアートと言えるのかの議論は永遠に続きそうだな〜……。
この辺の「アートとは何か」の話については、以下の記事でも分かりやすく書いているから、気になる方はぜひ読んでみてくださいね♪
「原始美術」の作品はどこで見れる?
原始美術を鑑賞しようとすると、やっぱり海外に行かないと難しいのか?
そうね。
西洋美術史における原始美術となると、日本国内ではなかなかお目にかかれないわ。
ただ、西洋東洋問わずに原始美術を見たいということであれば、美術館ではなく博物館へ行けばさまざまな美術作品を見ることができるわね。
ヨーロッパと日本の原始美術にどういう違いや共通点があるのか、考えながら見るのも面白いかもな!
なかなか実物を見る機会は得られないと思うから、Webサイトや書籍などで見るのも良いかもしれないわね♪