ジョット「スクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画」を分かりやすく解説!

ジョット「スクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画」を分かりやすく解説!

「西洋絵画の父」とも言われるジョット・ディ・ボンドーネの最高傑作であるスクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画をご紹介します!

スクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画の作品画像や作品情報だけでなく、そこに描かれているものや描かれた背景についてもご紹介していきます。

「スクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画」ってどんな絵?

まず、スクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画の基本情報はこちらですね。

作者ジョット・ディ・ボンドーネ
制作年1305年頃
絵画様式後期ゴシック
画材・技法フレスコ
収蔵スクロヴェーニ礼拝堂

そして、スクロヴェーニ礼拝堂内部の様子がこちら。

これは礼拝堂の奥から手前入り口側を映した写真ですね。

装飾絵画は37の場面で構成されている壁画です。

スクロヴェーニ礼拝堂内部の様子

そして個別の壁画はこちら。

(数が多いため一部のみ掲載しています。)

ジョット・ディ・ボンドーネ
「神殿から追われるヨアキム(スクロヴェーニ礼拝堂)」
ジョット・ディ・ボンドーネ
「ユダの接吻(スクロヴェーニ礼拝堂)」
ジョット・ディ・ボンドーネ
「東方三博士の礼拝(スクロヴェーニ礼拝堂)」

スクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画を描いたジョットは、中世ヨーロッパの無機質で禁欲的な芸術から脱却し、来たるルネサンスに先駆けた人間味あふれる表現をおこなった画家。

同時代の他の画家と比べても、

  • 背景と人間の遠近感
  • 人体の自然さ
  • 人物の表情の柔らかさ

などで秀でています。

先ほど紹介した「ユダの接吻」の絵なんてまさにジョットの絵の人間味を体現していますよね。

ユダの接吻は、裏切り者のユダが誰がイエスかをユダヤの祭司長に伝えるために接吻(キス)をするシーン。

絵を見てみると、イエスの肩を抱いてキスをするユダ、そしてユダの裏切りを最初から知っていて運命を受け入れるかのような表情のイエス、それを合図に「あいつだ!」と指さすユダヤの祭司長……。

ジョット以前には、こういったドラマを感じさせるリアリティーあふれる絵は存在しなかったんですよ!

いや〜〜、ジョットは西洋美術の歴史を変えた偉大な画家だ……!

……と、ちょっと熱くなっちゃいましたが(笑)、そんなジョット自体の功績については、ジョットの紹介記事があるのでそちらを読んでいただくと良いと思います!

絵や画家については最低限分かったと思うので、ここからはスクロヴェーニ礼拝堂絵画をより具体的にご紹介していきます!

「スクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画」は何が描かれている?

スクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画は合計37の場面で構成されているとお話ししましたが、一つのテーマに沿って描かれているんですよね。

そのテーマ、モチーフについて紹介していきます。

描かれているのはマリアとイエスの生涯

描かれているのは主に、聖母マリアとその子イエス・キリストの生涯です。

特徴的なのは、比較的マリアの生涯に比重が置かれて描かれていることです。

礼拝堂内に入ってすぐ、振り返って入り口側の壁画を見ると最後の審判の場面が描かれていますが、そちらには「最後の審判」が描かれています。

ジョット・ディ・ボンドーネ
「最後の審判(スクロヴェーニ礼拝堂)」

最後の審判とは、死者が天国行きか地獄行きかを決められるシーンですね。

(画像右下が露骨に地獄めいていますよねw)

そして、礼拝堂の奥側のアーチ部分には受胎告知にまつわるシーンが描かれています。

ジョット・ディ・ボンドーネ
「受胎告知の天使を遣わす神(スクロヴェーニ礼拝堂)」

受胎告知は聖母マリアが処女懐胎(男性と性的な行為をせずに子供を妊娠)したことを天使ガブリエルに告げられるエピソードに基づいたキリスト教絵画のテーマです。

スクロヴェーニ礼拝堂の内陣アーチ部分に描かれているのは、ガブリエルがこれからマリアに「処女懐胎しましたよ〜」と告げに行くシーンで、

ガブリエル!君に決めた!マリアに妊娠を告げて来い!

ラジャー!!

というやりとりを交わしているところです。

ハレー彗星も描かれている?!

実は壁画の中の一場面である「東方三博士の礼拝」の中に、ハレー彗星らしきものが描かれているんです!

さて、どこでしょうか?!

……分かりましたか?笑

ここです!

実はこの星、東方三博士の礼拝の場面では大抵描かれている「ベツレヘムの星」なんですね。

東方三博士の礼拝を簡単に説明すると、

東方三博士(東の方にいる賢者たち)がイエス・キリストが誕生したことを知って礼拝しにくる

というキリスト教画の人気テーマの一つです。

その東方三博士にイエスが生まれたことを知らせ、生まれた場所まで導いたのがベツレヘムの星と言われています。

それがなぜハレー彗星に繋がるのか。

実はこの頃、75年に一回しか地球に近づかないハレー彗星が接近していたときだったんです。

ハレー彗星が最接近したのが1301年。

そしてジョットがスクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画を制作したのが1305年。

そう、ジョットがハレー彗星を実際に見た上で、描いた可能性は十二分にあるのです……!

このエピソードから、1986年に打ち上げられたハレー彗星の探査機の名前が「ジョット」と命名されました。

「スクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画」が描かれた背景は?

スクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画がなぜ描かれたのかをお話しする前に、スクロヴェーニ礼拝堂自体がどういう経緯で創設された礼拝堂なのかをお話ししましょう。

スクロヴェーニ礼拝堂は誰がどんな目的で創設したか?

イタリアはパドヴァにあるスクロヴェーニ礼拝堂ですが、高利貸しで財産を築いた一族のエンリコ・デッリ・スクロヴェーニという人物が出資して創設した礼拝堂です。

「高利貸し」というのは、お金に困っている人に簡単にお金を貸す反面、高額な利息をふっかける業者ですね。

まぁ要するに、闇金ウシジマくんみたいな感じです!

(分からない方がいたらごめんなさい。笑)

このスクロヴェーニ一族、闇金ばりに悪徳だったかは定かではありませんが、人に恨まれかねない仕事をしていた一族ではあるんですよね。

特に彼のパパ、レジナルド・デッリ・スクロヴェーニは、ダンテの神曲の中でダンテが出会う高利貸しのモデルになっています(というか本人ですw)。

ルネサンスに差し掛かり商業が発展してきていた当時、このスクロヴェーニ一族のように金貸し業をおこなう人たちがちらほら出てきていていました。

ですが、高い金利で金を貸し出す行為はキリスト教的にはアウトで、死後、地獄に落ちるほど罪深いことでした。

そこで、エンリコ・デッリ・スクロヴェーニは

地獄に落ちたくないよ〜〜!
僕ちんとパパに救いの手を……!

と、私財を投げうってスクロヴェーニ礼拝堂を創設したのでした。

(なんつーエゴイズム。笑)

ちなみに、そんなエンリコの姿がスクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画の中で描かれています。

それは、最後の審判の中央下、やや左寄りの場所です。

ジョット・ディ・ボンドーネ
「最後の審判(スクロヴェーニ礼拝堂)」(部分)

左下で跪いている人物こそがエンリコです。

ちなみに、右側で手を差し伸べているのは聖母マリア。

そのマリアの手前にあるピンク色の建物はスクロヴェーニ礼拝堂そのものです。

救いのために最高の画家と絵の具を揃えた

エンリコさん、よほど救われたかった気合い入っていたのか、当時最高の画家と名高かったジョットに装飾絵画を依頼したんですよね。

その上、当時非常に高価であった顔料ウルトラマリンブルーを使わせています。

このウルトラマリンブルー、主に背景の青色に使われているんですが、鮮やかで深みがある群青で魅力的ですよねぇ。

僕はこのウルトラマリンの青に惹かれて、好きになったんですよね〜、スクロヴェーニ礼拝堂。

余談ですが、日本人が大好きな17世紀オランダの画家、ヨハネス・フェルメールもウルトラマリン使いですよね。

ヨハネス・フェルメール
「真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)」

ターバンの部分の青がまさにウルトラマリンですね!

実に美しい!

もともと「受胎告知」と縁がある場所

スクロヴェーニ家の私的な救済のために、作られた礼拝堂と描かれた壁画ではありますが、礼拝堂ができる前からこの場所は「受胎告知」と縁がある場所でした。

というのもスクロヴェーニ礼拝堂を建てた場所は、30年に渡って受胎告知をテーマにした演劇が上演されたきた場所だったんですよね。

なので、一応、百歩譲って(笑)、スクロヴェーニ礼拝堂の内部装飾をマリアの受胎告知を中心とした壁画にすることは大義名分があるのです。笑

「スクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画」はどこで鑑賞できる?

さて、スクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画がどんな絵でどんな背景で制作されたものかが分かったところで、ぜひとも本物を見てみたくなったことかと思います。

スクロヴェーニ礼拝堂自体は、イタリアのパドヴァというヴェネツィアから比較的近いところにある町にあるので、ヨーロッパ旅行をすれば見ることができます。

ですが!

なんと!!

日本でも見ることができます!!

なんですって〜〜?!?!
どこで見ることができるのよ!

実は、徳島県にある大塚国際美術館には、スクロヴェーニ礼拝堂を礼拝堂ごと再現したレプリカの環境展示があります……!

本物ではないですが、かなり忠実に再現されているので十二分に堪能できます。

もちろん装飾絵画も完全再現!

しかも、そこで結婚式を挙げることもできちゃいます!!

(参照:美術館でウェディング|大塚国際美術館 – 四国 ・ 徳島県の美術館 観光施設 –

すごい!!

(あ、決して大塚国際美術館の回し者ではありませんが、実際に行って鑑賞して鳥肌が立つほど感動したので、つい熱が入ってしまいました。笑)

イタリアの現地で鑑賞できるのが最高ですが、どうしても行くことが難しい方は大塚国際美術館へ行って鑑賞するのも良いでしょう!

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