「象徴主義」を分かりやすく解説!

「象徴主義」を分かりやすく解説!

今回は象徴主義について紹介するわね。

「象徴主義」の代表作は?

まずは象徴主義の代表作を見ていきましょう。

ギュスターヴ・モロー「オイディプスとスフィンクス」

ギュスターヴ・モロー「オイディプスとスフィンクス」
1864年/メトロポリタン美術館(アメリカ)
参照:オイディプスとスフィンクス – Wikipedia
フェルディナント・ホドラー「夜」
フェルディナント・ホドラー「夜」
1889年/ベルン美術館(スイス)
アルノルト・ベックリン「死の島」
アルノルト・ベックリン「死の島」
1883年/旧国立美術館(ドイツ)
オディロン・ルドン「眼=気球」
オディロン・ルドン「眼=気球」
1878年/ニューヨーク近代美術館(アメリカ)

な、なんか幻想的でちょっと怖くもあるな……!

「象徴主義」の特徴は?

では、象徴主義の特徴について解説するわね。

苦悩や夢想といった形の無いものを表現

象徴主義の最大の特徴は、形の無いものを描いたことよ。

ん?どういうことだ?

歌琳さん。
もし、「犬を描いて」って言われたら描けるかしら?

そんな上手くなくていいなら描けるぜ!

じゃあ、「『怖い』を描いて」って言われたら?

えっ?!
そんなの描けねぇよ〜!

怖いもの……例えば、クモを描けって言われたら描けるけど……。
「怖い」を描けって言われたらどう描いたらいいか分からないぜ!

(歌琳さん、クモが苦手なのね……。笑)

そう。
「怖い」は人の感情であって、それ自体に形は無いから描けないわ。

でも、歌琳さんは「クモ」を「怖い」の象徴として表現しようとしたわね?

ああ、そうだな!

それこそが象徴主義の画家がおこなったことよ。

象徴主義の画家たちは、苦悩や夢想といった人の内面にある形無いものを、神話や文学に登場する人物などの「形あるもの」を用いて描いた(象徴した)の。

なるほど、だから象徴主義って呼ばれているのか……!
イメージが掴めたぜ!

だから象徴主義の作品は、描かれているものそのものを見るのではなく、それが何を象徴しているのか想像しながら鑑賞すると面白いのよ。

物質主義への反発から誕生

それにしても、どうして
「人の内面という形の無いものを描こう!」
という流れが生まれたんだ?

象徴主義が起こった19世紀は、資本主義経済が生まれ、ヨーロッパ社会が一気に近代化した時期だったわ。

そうだな。
18世紀末〜19世紀に起きた産業革命以後、一気に社会が変化していった感じがするぜ。

で、都市化が進んで社会インフラが整った反面、人々は
「お金を持ち、物を所有・消費することこそが豊かさだ」
という物質主義的な考え方に支配されていった
の。

確かに同時代の印象派の作品を見ていると、人々が都会で社交する様子がよく描かれていて、物質的なものを重んじている感じはするな……!

ピエール=オーギュスト・ルノワール「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」
印象派の代表作、ルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」。
人が踊ったりお酒を飲んだりしている様子が描かれておろ、シティーな感じがうかがえる。

象徴主義は、そういった物質主義への反発から生まれたのよ。

目に見える物質的なものじゃなくて、目に見えない精神的なものを追いかけたところに表れているな。

そうそう。
社会の近代化に合わせて科学も近代化したことで、フロイトやユングといった人の内面を解き明かそうとした研究者が現れたことも、象徴主義の後押しになったわね。

フロイトって夢について研究した精神分析学者だよな!

世紀末芸術に大きな影響

象徴主義は、世紀末芸術に多大な影響を与えたわ。

世紀末芸術ってなんだ?

世紀末芸術は、1890年代から20世紀にかけてヨーロッパで流行した美術の傾向よ。
幻想的、神秘的、退廃的といった特徴があるの。

象徴主義も幻想的で神秘的な雰囲気の作品が多いから、確かに近いものは感じるな!

ちなみに世紀末芸術は全体的な傾向を表すものであって、一定の潮流・流派のことではないわ。

要するに、19世紀末にブームになった表現って感じか〜。

でもさ、これまでも世紀末って何度も訪れていたのに、なんで19世紀末だけ特別意識されたんだ?

それには、時代背景が関係しているわね。

19世紀末のフランスはベル・エポック(良き時代)と呼ばれる、比較的社会が安定して発展した時代だったの。

ベル・エポックの前はフランス革命でゴタゴタしていたもんな〜。
社会情勢が安定していたから、停滞することなく近代化が進んでいったんだろうな。

そうね。
で、近代化して資本主義社会が出来上がっていく中で、人々の思想にある変化が生まれたわ。

ある変化?

19世紀までずっと、ヨーロッパ社会の軸となっていたキリスト教的価値観が揺らいだのよ。
そしてこの思想の変化は、19世紀末の芸術家たちにも影響を与えたわ。

どういう影響を与えたんだ?

これまでの西洋美術の歴史は、ほぼキリスト教とともにあったの。
要するに、神話や聖書の世界を表現することが芸術の存在意義になっていたってこと。

うんうん。

それが揺らいでしまったので、芸術はキリスト教と関係なしに独自に存在意義を確立する必要が出てきたわ。

そこで、活路を見出したのが、
「芸術家は社会や宗教のためでなく、自身の内的世界を形にして表現していこう!
という考え方よ。

なるほど、芸術がより個人的なものになったんだな……!
これって、うちら現代人のイメージする芸術にかなり近い感じがするな〜!

そうね。
ヨーロッパの芸術家たちはこれを「芸術のための芸術」と呼んだわ。

象徴主義的な表現方法は、この「芸術のための芸術」の思想を体現するのにちょうど良いものだったの。

だから、象徴主義と世紀末芸術は密接な関係があるんだな〜。

ちなみに、今回代表作として提示した作品のうち、純粋に象徴主義と言えるものはギュスターヴ・モローの作品のみよ。

モローは神話や文学をモチーフにしていて、それこそが象徴主義の芸術家たるゆえんだわ。

ベックリンやルドンはどうなんだ?

ベックリンやルドンは象徴主義的な要素はあるものの、モチーフや表現は独自の路線をいっているわね。

あ〜、だからベックリンやルドンを象徴主義にくくるかどうかは解釈が分かれるんだなぁ。

そうね、世紀末芸術の画家ではあるんだけどね。

各々が芸術を独自に解釈、表現するようになって個人様式が増え、一つの潮流にくくることが難しくなった
ということね。

「象徴主義」が見れる場所は?

日本国内で象徴主義の作品がまとめて鑑賞できる場所は残念ながら無いのよね。

象徴主義についてもっと知りたいなら、書籍や画集を購入するのがおすすめだぜ!

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