岡本太郎「太陽の塔」を分かりやすく解説!

岡本太郎「太陽の塔」を分かりやすく解説!

今回は岡本太郎の「太陽の塔」を解説していくわね!

1970年の日本万国博覧会(通称:大阪万博)のために作られたってのは知っているけど、どういうメッセージが込められた作品なんだろうな?

「太陽の塔」ってどんな作品?

岡本太郎が太陽の塔にどんなメッセージを込めたのかは後で解説するとして。

歌琳さん、そもそも太陽の塔の全貌って知っているかしら?

全貌?
うーん、なんかてっぺんと真ん中に顔がついているってイメージはあるけどな……?

太陽の塔の外観。このイメージが強い人が多いのではないだろうか。
参照:Wikipedia

四つの顔がある

そうね、多くの人は「顔がついている塔」というイメージだと思うわね。

では、歌琳さんに質問です♪
太陽の塔には合計でいくつの顔があるでしょうか?

えー?
てっぺんと真ん中以外にもあるのか……?

ふふふ♪
実は、合計で四つの顔があるの。

一つずつ見ていきましょ。
まずは塔の頂上についている「黄金の顔」ね。

黄金の顔
参照:Wikipedia

ちなみにこの黄金の顔は、目の部分が日没とともに光るようになっているわ。

マジか!光るのかよ!

次は塔の中腹にある顔ね。
「太陽の顔」と呼ばれているわ。

太陽の顔
参照:「太陽の塔」オフィシャルサイト(大阪府日本万国博覧会記念公園事務所)

これなんか顔怖いよな〜。

そして、三つ目の顔は……、塔の裏側にあるの。
これは通称「黒い太陽」と呼ばれているわ。

黒い太陽
参照:Wikipedia

裏側って初めて見たぜ!

……あれ?
まだ三つだけど、残りの一つはどこにあるんだ?

残り一つの顔は、太陽の塔の地下にあるの。

地下ぁ?!
そりゃ分からないわけだぜ……!

この顔は通称「地底の太陽」と呼ばれているわ。

地底の太陽(復元)
参照:「太陽の塔」オフィシャルサイト(大阪府日本万国博覧会記念公園事務所)

ちなみにこの地底の太陽は、万博終了後に行方が分からなくなってしまい今も見つかってないの。

それで、2018年に復元されたのよ。

「太陽の塔」の中には「木」がある

それにしても、その地底の太陽ってのはどうやって見ればいいんだ?

実は、太陽の塔の中は空洞になっていて、内部も作品になっているの。

地底の太陽がある地下展示があって……、

地下展示の様子
参照:「太陽の塔」オフィシャルサイト(大阪府日本万国博覧会記念公園事務所)

そこから上へのぼっていくと、「生命の樹」と呼ばれる展示があるわ。

生命の樹
参照:“太陽の塔”内部を写真で徹底解説!48年たっても衰えない生命のエネルギーは圧巻|ウォーカープラス

うぉぉぉ、すごいな!
鑑賞するっていうか、もはや「体験する」に近いな……!

これは太陽の塔にすっぽり入るような大きな鋼鉄製の木で、33種292体の生物模型(※1)も合わせて展示されているのよ。

※1:万博当時の数字。現在は33種183体となっている。

なんかクラゲっぽいのいるし、上の方のあれは恐竜……?

当時は空中展示もあった

で、生命の樹を見ながら上へのぼっていくと、当時は空中展示エリアがあったの。

空中展示の様子
参照:「太陽の塔」オフィシャルサイト(大阪府日本万国博覧会記念公園事務所)

当時は?
今は無いのか??

実は、万博開催中は太陽の塔をぐるりと囲むように「大屋根」があったの。

空中展示エリアはその大屋根の中だったのよ。

けど、万博終了後は取り壊されて、今は太陽の塔のみが残っているのよね。

太陽の塔をぐるりととりまくようにあるのが大屋根。
参照:「太陽の塔」オフィシャルサイト(大阪府日本万国博覧会記念公園事務所)

そうだったのか!
ちなみに、大屋根は岡本太郎が作ったのか?

いいえ。
大屋根のデザインは建築家の「丹下健三」が担当したわ。

「太陽の塔」が作られた背景は?

太陽の塔の概要は分かったけど、どうしてこういう作品を作ることになったんだ?

万博のシンボルマーク

そのためにはまず、万博について話をする必要があるわね。

そもそも万国博覧会がどういうものだったか知っているかしら?

なんかこう……世界中の国が、なんか……展示するんだろ?

ふわっとしすぎよ。笑

簡単に説明すると、
万国博覧会=人類が達成した実績や将来の展望を示す国際的な催し
って感じ。

人類はこんなにいろいろできて未来も楽しみだぞ〜っていうのをいろんな国が見せ合う展示か!

だからこの大阪万博も戦後最大のイベントとして、ぜひとも成功させたかったの。

そんな大阪万博の会場の総合設計・プロデュースを担当したのが、さっきも名前の出てきた丹下健三よ。

岡本太郎はどんな役割だったんだ?

岡本太郎は、大阪万博の目玉となるシンボルゾーンのテーマ館、兼、シンボルマークのプロデュースを担当していたのよ。

なるほどな、大阪万博の顔となる部分を任されたのか!

だから岡本太郎はプロデューサーに任命されたとき、「べらぼうなものを作るぞ!」と周囲に言っていたのな〜。
そりゃ気合も入るわけだぜ!

丹下健三と喧嘩?

岡本太郎は、すでに設計できていた丹下健三デザインの大屋根の模型を見て、「70mだな」とつぶやいたかと思うと、太陽の塔で大屋根をぶち抜く設計をしたのよ。

と、とんでもねぇぜ……!

岡本太郎の傍若無人っぷりに丹下が怒り二人は大喧嘩に……なんて噂もあったものの、これはあくまで噂よ。

そもそも総合プロデューサーの丹下の方が立場は上で、彼の権力を考えたら太陽の塔の設計なんか白紙に戻すこともできたの。

確かに、考えてみりゃそうだよな……!

太陽の塔がそのままの設計で進められたのは、丹下が「大阪万博にはこの太陽の塔が必要だ」と考えたからと言われているのよね。

それに、そもそも岡本をテーマ館・シンボルマークのプロデューサーに推薦したのは丹下だったの。

岡本太郎のとがったキャラクターも相まって、「岡本太郎と丹下健三が大喧嘩した」っていう噂が出回ってしまったってことか〜。

「太陽の塔」に込められた意味は?

では、太陽の塔に込められたメッセージを紐解いていくわね。

四つの太陽とか生命の樹とかがどういう意図で作られたのか気になるぜ!

「太陽の塔」に込められたメッセージ

大阪万博には「人類の進歩と調和」というテーマが掲げられていたの。

そこで岡本太郎は、過去・現在・未来を貫く万物のエネルギーの象徴として太陽の塔を設計したわ。
そして同時に太陽の塔は、生命の中心、祭りの中心という位置付けでもあったの。

めちゃくちゃ壮大だな……!

太陽の塔の中の展示については、

地下:過去 根源の世界 – 生命の神秘
地上:現在 調和の世界 – 現代のエネルギー
空中:未来 進歩の世界 – 分化と統合(組織と情報)

がテーマとされていたわ。

上の階にいくにしたがって過去・現在・未来ってなっているんだな!

四つの顔の意味

そう、だから四つの顔についても、

黄金の顔:未来を象徴
太陽の顔:現在を象徴
黒い太陽:過去を象徴
地底の太陽:人間の祈りや心の源を表現

と下から上へ向かって、過去・現在・未来となっているわ。

へー!
でも、地底の太陽は「人間の祈りや心の源」なんだな!

地下展示の呪術的世界観

岡本太郎は太陽の塔を手掛けたころ、「芸術は呪術である」と言っていたのよね。

作風も梵字を感じさせるような模様などを描いていて、呪術的な雰囲気をまとっていたのよ。

言われてみれば、宗教的な雰囲気があるな!

実際に地下展示では、地底の太陽の周りに世界各国の仮面が展示され、プロジェクションマッピング(※2)で映像が投影され、神秘的な音楽が流されていたの。

※2:作成したCGを建物や物体、空間などに対して投影する技術。

すげぇな〜!
大阪万博のときに、実際に展示を体験してみたかったぜ!

生命の樹の意味

なぁなぁ、ルネちゃん。
うち、生命の樹の意味が分かっちゃったかも!

生命の樹は地上展示から空中展示へと繋ぐものだったわけだから、過去から未来へ繋がっていく〜みたいな意味が込められていたんだろ?

そうね、だいたいそのとおりよ♪

未来へ向かって伸びていく生命の力強さを表現したのが生命の樹。

それでそれで!
クラゲとか恐竜とか生物の模型がいろいろ展示されているのは、進化の流れを表現しているんだろ?!

ご名答♪

こういった進化の流れを木のように表現するもののことを一般的には「系統樹」とか「進化の樹」と呼ぶの。

きっと理科の教科書とかで見たことがある人もいると思うわ。

系統樹

「太陽の塔」は人間そのもの?

岡本太郎は
「人間の身体、精神のうちには、いつでも人類の過去、現在、未来が一体となって輪廻している」
と語っているの。

「人類の過去、現在、未来が一体となって輪廻」
というところ、まるで太陽の塔の内部の展示のようだよな!

人間の過去や根源から現在のわたしたちへ至って、生命の樹とともに未来へと向かう……。

それを内部に宿している太陽の塔は人間そのものを表しているのかもしれないわね。

そうやって想像しながら見ると、より太陽の塔を楽しめるな!

「太陽の塔」はどこで見れる?

太陽の塔は大阪の万博記念公園内にあるので、誰でも見にいくことができるわ。

しかも、外から見るだけでなく内部も見ることができるわ。

え!中も見ることができるのか!!

ただ、下の公式サイトから事前予約をする必要があるの。
気になる人はぜひ公式サイトへ飛んでみて♪

▶︎ 「太陽の塔」オフィシャルサイト(大阪府日本万国博覧会記念公園事務所)

もし、今回の記事を読んでもっと太陽の塔について知りたいと思った方はドキュメンタリー映画や、

▼ 映画「太陽の塔」

岡本太郎のもとで太陽の塔の設計に関わった人たちの証言集

▼ 書籍「『太陽の塔』岡本太郎と7人の男たち」

などで、より理解を深めるといいと思うわ。

ちなみに、太陽の塔をインテリアとして起きたいぜ!っていう人は、フィギュアで有名な海洋堂で1/350スケールの模型とかが出ているぜ!

▼ 太陽の塔の1/350スケールの模型

作品カテゴリの最新記事