今回は、ゴシック美術について紹介していくわね。
「ゴシック」っていう言葉はよく聞くよな〜。
ゴスロリ(ゴシック・ロリータ)とか……。
ゴシック美術とゴシック・ロリータの関係は気になる人も多いと思うので、記事の最後の方で触れるわね。
「ゴシック美術」の代表作は?
では、まずはゴシック美術の代表作をお見せするわ。
シャルトル大聖堂
1194〜1220年/シャルトル(フランス)
参照:シャルトル大聖堂 – Wikipedia
ノートルダム大聖堂
1163〜1225年/パリ(フランス)
参照:ノートルダム大聖堂 (パリ) – Wikipedia
ケルン大聖堂
1248〜1880年/ケルン(ドイツ)
参照:ケルン大聖堂 – Wikipedia
建築ばかりだ!
しかも大聖堂が多いな〜!
建築以外のものも無いわけではないんだけど、代表となると建築物が多い感じね♪
「ゴシック美術」の特徴は?
ゴシック美術の特徴を紹介していくわね。
「ゴシック」は差別用語
実は「ゴシック」という言葉はもともと差別用語なの。
え?!そうなのか?
どういう意味なんだ?
「ゴート風の」という意味よ。
これはロマネスク美術の解説記事でも触れたゲルマン民族のゴート族のことを指しているわ。
なんでそれが差別用語になるんだよ?
実は、ルネサンス以降の美術批評家たちは、ビザンティン美術やロマネスク美術、ゴシック美術が栄えた中世ヨーロッパのことを「暗黒時代」と呼んだの。
暗黒時代……。
彼らは、
「理想的であった古代ギリシャ・古代ローマの美術が、ゲルマン民族の侵入によって長い間失われた!」
と主張していたのよ。
だから、「理想からかけ離れた不格好で奇怪な美術」という意味で「ゴート風だ!」と名付けたの。
まさかそんな背景があって「ゴシック」と呼ばれるようになったなんて……。
ちなみに、「ゴート風の」と言っているけど、ゴート族の美術様式とはなんら関連性が無いわ。
ええっ?!
差別意識から来る印象だけで「ゴート風」って言われたのよ。
ゴート族からすると、たまったもんじゃねぇな……。
ただ、現代では中世を暗黒時代と呼ぶのは見直されつつあるわ。
さらに、それに伴ってゴシック美術を始めとした中世の美術様式も見直されるようになったの。
そうか〜、それなら良かったけどな!
大聖堂建築のゴシック
差別的な感覚から生まれたゴシック美術だけど、ロマネスク美術同様に世界的に有名な建築物がたくさんあるのよ。
そうだよな!
シャルトル大聖堂やノートルダム大聖堂なんかは、日本人のうちらも知っているもんな。
特にゴシック建築は大聖堂建築のゴシックとも言われるほど、都市部にたくさんの大聖堂が作られたの。
中世って教会がもっとも力を持っていた時期だから、信者が礼拝したり修道したりする場所が求められたんだろうなぁ。
ゴシック美術はとりわけその壮大さが魅力よね。
特徴を箇条書きで紹介すると、
・大きな開口部(※1)
・鋭くとがった塔
・高い天井
・ゴージャスなステンドグラス
という感じ。
(※1)開口部:壁や屋根などに設置された窓や出入り口のこと。
外観から分かる分かりやすいゴシック建築の特徴は、鋭くとがった塔と大きく開いた開口部。
参照:ゴシック建築 – Wikipedia
ゴシック建築は高い天井が特徴。荘厳で威厳を感じさせる。
参照:ゴシック建築 – Wikipedia
開口部を広くできるようになったのに合わせて、ステンドグラスが作られるようになった。
参照:シャルトル大聖堂 – Wikipedia
三つの建築構造
ロマネスク建築と比べて、でっかく&高くなっていったのはなんか理由があるのか?
建築技術が向上したことが大きいわね。
ゴシック建築では、三つの建築構造が開発されたの。
具体的には、
・尖塔アーチ
・リヴ・ヴォールト
・フライング・バットレス
の三つ。
おお!カタカナ語が並んでいる……!
そうね。笑
一つずつ説明していくわね。
まずは「尖塔アーチ」。
この尖塔アーチが開発されたおかげで、建物の重みを下ではなく横へ逃せるようになったの。
ただ、尖塔アーチは中央が尖っているのでそこに負荷がかかってしまうわ。
そこで、建物内部の空間をアーチ状で覆う建築構造「リヴ・ヴォールト」が登場するの。
建物の重みを横に流すってすごいな……!
あれ?
でも、このままだと外側へ向かって負荷がかかって、こんな感じで崩れちまわねぇか?
そうね。
そこで生まれたのが、「フライング・バットレス」よ。
このフライング・バットレスにより、高い建物の壁を外側から支えることができるようになったの。
なるほど!革命的だな!!
しかも、この独特な形状がゴシック建築に魅力を与えている感じするな〜。
リアリティーの増した絵画表現
ここまで建築の話ばかりだったけど、絵画の方はどうだったんだ?
結論から言うと、これまで長い間キリスト教の精神性ばかり表現していたところから、徐々にリアリティーが増していくわ。
おお!
ついにリアルさを求めるようになるのか……!
ただこれは、12〜15世紀ごろに流行したゴシック美術の後半にやっと出てきた風潮。
絵画の様式は、建築の様式より遅れをとって変化したのよ。
あっ!
なんだろう、なんか少しだけ現実味が増したような……?
パッと見た感じは大きな変化がないように見えるけど、例えば、
・人の表情にバリエーションが増えた
・影がグラデーションになり立体感が増した
・完璧ではないが奥行きを表現しようとしている
といった変化があると思うわ。
ビザンティン美術のイコンやロマネスク美術の教会の天井画と並べて比較すると、よりその違いが分かりそうだな!
ゴシック・ロリータとの関連性は?
たぶん気になっている人が多いと思うから、ゴスロリ(ゴシック・ロリータ)との関連性についてお話しするわね。
……の前に、歌琳さんに一つ質問♪
ゴシック・ロリータの「ゴシック」ってどんなイメージがあるかしら?
う〜んと、そうだな〜。
なんというか……、黒いイメージ?
ダークっていうか、ちょっとホラーな感じっていうか。
あと、ものすごい個性的って感じするな!
他のファッションと違うぞって感じで。
そうよね、なんとなく「黒い」っていうイメージがあると思うわ。
他にも、「死」とか「退廃的」「神秘的」「異端的」といった印象が強いと思うわね。
ただ、こういった現代の我々がイメージする「ゴシック」と美術史における「ゴシック」には大きなギャップがあるのよ。
あ〜……。
ここまでゴシック美術の解説を聞いていて、なんとなくそんな感じはしていたぜ。笑
では、現代の我々がイメージする「ゴシック」はどこからやってきたか。
それは、ロック・ミュージックの一ジャンル「ゴシック・ロック」からなの。
1970〜1980年代にイギリスで誕生したゴシック・ロックは、音楽という垣根を超えて多くの国でサブ・カルチャーとして根付いたわ。
1970〜1980年代のゴシック・ロックのイメージ画像
参照:Bauhaus | Hostess Entertainment Unlimited
確かになんかゴシック・ファッションっぽい感じだ!
でも、なんでジャンル名にゴシックって言葉を使ったんだろうな?
実は、ここからさらに遡ることができるの。
当時のゴシック・ロックのバンドマンたちは、完全にオリジナルでゴシックを生み出したわけではないの。
18世紀後半〜19世紀後半のころに流行した「ゴシック文学」という文学ジャンルの影響を受けているのよ。
その「ゴシック文学」っていう文学はどんなものなんだ?
歌琳さん、「フランケンシュタイン」とか「吸血鬼」ってどんなイメージかしら?
ん?
まぁ、夜とか暗闇の中で活動する化物っていうイメージ……、あっ!
そう。笑
そのフランケンシュタインや吸血鬼を生み出したのが「ゴシック文学」なの。
なるほどな〜……。
ゴシック文学は、「不格好で奇怪な暗黒時代の美術」と蔑まれていたゴシック美術に光を当てたの。
差別用語だったゴシックを魅力的に仕立て上げたってことか〜!
すごいな!
まぁ、もともとの「ゴシック」の意味が曖昧だったからこそ、時代とともに変化しつつ世界中に広まっていったのだと思うわ。
「ゴシック美術」が見れる場所は?
ゴシック美術は国内だとなかなか見られる場所がないわね。
やっぱりフランスとかドイツとか、現地へ行って見た方が良さそうだな〜。
ゴシック美術について興味があるなら書籍を読むのも良さそうね。
ただ、書籍の数もあんまり多くない印象だな〜。
そうね。
暗黒時代と言われてきた時代が長く、そこまで評価されてこなかったことも関係しているかもしれないわね。