今回は印象派(印象主義)について紹介するわね。
お〜!ついに来たぜ、日本で大人気の印象派!!
「印象派」の代表作は?
では、まずは印象派の代表作を見ていきましょうか。
ここにあるのはごく一部で、日本人が知っているような名作がたくさんあるんだよな〜!
「印象派」の特徴は?
それでは、印象派の特徴について解説するわね。
見慣れてはいるけど、具体的にどんな特徴があるのか知らないから気になるぜ!
アカデミーに反発した同志たち
印象派は、その後の中心メンバーである、
・クロード・モネ
・ピエール=オーギュスト・ルノワール
・アルフレッド・シスレー
・フレデリック・バジール
の4人が同じ画塾で出会ったところから始まるわ。
画塾で一緒だったのか!
その4人は、アカデミー(※1)の美術教育に疑問を持っていたの。
(※1)アカデミー:16世紀に始まったものを起源とする美術学校「芸術アカデミー」のこと。日本の美大や芸大のような場所。
当時のアカデミーは、
「神話画や歴史画を主題にするべき」
「しっかりとした輪郭線を描くべき」
「筆跡が残らないくらいなめらかに塗るべき」
といった、ルネサンス以降の美術を規範とした保守的な教育をおこなっていたわ。
まぁ、確かに押し付けがましくは感じるな……!
そうだったな。
とりわけ大きな反発を生んだのが、1863年のサロン(※2)よ。
(※1)サロン:アカデミー会員による審査がある展示会。フランス革命後は、アカデミー所属の画家だけでなく、一般の画家も応募できるようになった。
この年は例年になく審査が厳しくて、多くの画家が落選してしまったの。
アカデミーの教育の中で評価された人が審査しているんだから、そりゃ新しい試みをする画家は評価されないよな……。
とりわけ、モネやルノワールらが慕っていた先輩画家、エドゥアール・マネが落選したことは彼らに激震が走ったの。
このときマネが出展したのが「草上の昼食」だったよな?
そう。
草上の昼食は、
「神話画や歴史画の中で裸婦を描くのはいいけど、現代の設定で裸婦を描くのは不道徳だ!」
と酷評されて落選したの。
え〜〜!!
絵の技術ではなくて、神話画や歴史画として描かなかったことで落選したのか……!
そういうことよ。
自分たちがリスペクトする先輩画家であるマネが、理不尽な理由で落選したのを見たモネやルノワールらは怒りを覚えたの。
そりゃそうだぜ……。
モネやルノワールらは、同様にサロンの大量落選に不満を覚えた
・カミーユ・ピサロ
・ポール・セザンヌ
・ベルト・モリゾ
・エドガー・ドガ
といった画家たちと、
「画家、彫刻家、版画家等の芸術家の共同出資会社」
を立ち上げて、自分たちの展示会を開くことにしたの。
動き出したんだな……!
このときに開催した展示会が、後に「第一回印象派展」と呼ばれる展示会になるのよ。
評論家に酷評されて生まれた「印象派」
そういえば、印象派って言葉はどこから来ているんだ?
後に第一回印象派展と呼ばれることになる展示会で出展された、モネの「印象・日の出」から名付けられたものなのよ。
モネ自身の代表作であり、印象派の代表作だよな!
この「印象・日の出」を槍玉に挙げて
「この海の絵よりも、作りかけの壁紙の方がまだマシだ!」
と酷評した評論家が、展示会に参加した画家たちのことを小馬鹿にして「印象派」と言ったの。
サロンで先輩のマネが酷評されるわ、自分たちで展示しても酷評されるわで踏んだり蹴ったりだな……。
でも、新しい美術の幕開けを望む一部の人々と、印象派と呼ばれた画家たち自身は、
「印象派か〜!いいじゃん!」
と好意的に受け止めて、そのまま採用したの。
だから、今現在でも「印象派」と呼ばれているのよ。
メンタル強いな〜……!
自然の光を描こうとした一派
印象派が誕生する経緯は分かったんだけど、印象派って実際どういう絵画を目指したんだ?
印象派が目指したのは「自然の光を描く」ということよ。
自然の光を描く?
ちょっとイメージが湧かないな……。
どういうことなんだ?
その話をする前に、まず前提の話をするわね。
19世紀のヨーロッパの美術史は、大きく分けて二つの流れがあったの。
二つの流れ?
なるほど!
そして、ありのままの現実を描く派の中でも、
写実主義:社会の現実をリアルタッチで描く
バルビゾン派:農民や自然を屋外で観察して描く
ラファエル前派:神話や文学の世界を現実に即して細密に描く
と、いろいろ違いがあったの。
くわしくは各潮流の記事を読むと分かるけど、たしかにそうだな〜。
印象派はバルビゾン派とやや近いところがあって、
主に屋外の人々や風景を、光の表現に重きをおいて感覚的に描く
という特徴があるのよ。
イーゼルとチューブ入り絵の具を持って外で制作をしたっていうことか〜。
でも、その
「光の表現に重きをおいて感覚的に描く」
が、具体的にどういうやり方なのか気になるなぁ。
色を混ぜずに並べる「筆触分割」
印象派は、光の表現をおこなうために「筆触分割」という技法を開発したの。
ひっしょくぶんかつ?
筆触分割とは、なるべく色を混ぜずに原色の状態で並べる技法よ。
んん……?!
なんのこっちゃだぜ……!
ふふふ♪
では、ここで質問。
歌琳さん、これって何色に見えるかしら?
え〜と、紫だよな?
正解よ♪
じゃあ、この画像の一部をずーっと拡大していくと……。
あ……っ!
赤と青が並んでいる……!
そう。
原色を並べて、それを遠くから見ると色を混ぜていなくても混ざっているように見えるのよ。
その、人間の目の性質を利用したのが「筆触分割」と呼ばれるものよ。
実際の印象派の作品で見てみましょうか。
これはルノワールの「ぶらんこ」という作品だけど、画面中央右のぶらんこに手をかけている女性の服は何色だと思う?
これは白だな!
そう見えるわね。
でも、拡大してみると……。
白……だけじゃない……?!
緑、黄色、ピンク、青……ものすごいたくさんの色が使われている……!
そうなの。
ただ服を白で描き、陰をグレーで描くのではなく、さまざまな色を並べて木漏れ日に照らされた白い服を表現しているのよ。
これこそが印象派のお家芸、筆触分割。
アカデミック美術の絵の塗りと比較して見ると、より違いが分かるな!
当時のアカデミーは、
「しっかりと色を混ぜて丁寧に塗るのが常識!」
という価値観だったから、印象派の作品を初めて見たときはさぞ驚いたでしょうね。
なるほどな……!
だから、当時のアカデミー会員や評論家たちは印象派のことを
「ただのスケッチ?」
「これって未完成なのか?」
って批判したんだなぁ。
近代美術の起点として後世に影響
印象派は、近代美術の始まりとも言われているわね。
実際、現代でも印象派って人気があるもんな!
でも、なんで他の潮流じゃなくて印象派なんだろうな?
もちろん印象派の画家たちの活動の功績も大きいけど、時代背景が大きく影響しているわね。
時代的には19世紀後半だよな?
そう。
もう少し細かく言うと、印象派が登場したのが1860年代。
で、酷評を受けながらも一定以上の評価を得たのが1880年代だよな。
市民が自由を勝ち取ったフランス革命から100年近くが経とうとしていたころよ。
フランス革命後、近代化が進んだヨーロッパでは「個人主義」が台頭してきたわ。
個人主義?
個人主義は、国家や社会よりも個人の価値を重んじて、個人の自由や権利を尊重する考え方よ。
なるほど〜。
現代だとこういう個人主義的な考え方ってわりと一般的だけど、このころに育まれた考え方だったんだなぁ。
そうよ。
個人主義と「芸術のための芸術(※3)」が台頭したことで、芸術家それぞれが独自に芸術を解釈、表現するようになって、20世紀以降の美術史の潮流が細分化していったのよ。
(※3)芸術のための芸術:「芸術は社会や宗教のためでなく、芸術家自身の内的世界を表現するためにあるべき」という価値観。
なるほどな。
価値観が近代化するのに合わせて近代美術も始まったってことなんだな〜。
「印象派」が見れる場所は?
印象派の作品がまとめて見られる場所って日本国内にあるのか?
おお……!
さすが印象派だぜ!
他にも、芸術家の幅は広くないものの印象派の作品の数点所蔵している美術館がこちら。
・笠間日動美術館(茨城県笠間市)
所蔵作品:モネ、ドガ、ルノワールの作品
・DIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)
所蔵作品:モネ、ルノワールの作品
・大原美術館(岡山県倉敷市)
所蔵作品:モネ、ドガの作品
・地中美術館(香川県香川郡直島町)
所蔵作品:モネの睡蓮シリーズ
・アサヒビール大山崎山荘美術館(京都府乙訓郡)
所蔵作品:モネの睡蓮シリーズ
・SOMPO美術館(旧館名:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館)(東京都新宿区)
所蔵作品:ゴッホのひまわり
日本にはモネの作品が多い印象あるな!
そうね。
実際に鑑賞するだけでなく、もっと学びを深めたいという方は印象派に関する画集・書籍を購入すると良いと思うわ。