今回は「ローマ美術」を解説していくわね。
ローマって言えば「テルマエ・ロマエ」だよな!
テルマエ・ロマエ(漫画)
参照:テルマエ・ロマエI (ビームコミックス) | ヤマザキ マリ | 青年マンガ | Kindleストア | Amazon
テルマエ・ロマエ(映画)
参照:テルマエ・ロマエ – 作品 – Yahoo!映画
そうね♪
テルマエ・ロマエで馴染みのある人も多いと思うわ。
「ローマ美術」の代表作は?
それではローマ美術の代表作を見てみましょう。

紀元前20年ごろ/バチカン美術館所蔵
ディオニュソスの秘儀
50年ごろ/ポンペイ(イタリア)
参照:Wikipedia
コロッセオ(コロッセウム)
80年/ローマ(イタリア)
参照:Wikipedia
パンテオン(内部のドーム部分)
115〜118年ごろ/ローマ(イタリア)
参照:Wikipedia
コンスタンティヌス1世の頭像
325〜370年ごろ/カピトリーノ美術館
参照:Wikipedia
わりとギリシャ美術と似ている気がするけど、どういう違いがあるんだろうな?
「ローマ美術」の特徴は?
実は、歌琳さんの「ギリシャ美術と似ている」は間違っていないのよ。
あ!やっぱりか!
そもそも「古代ギリシャ・ローマ」でひとくくりにされることが多いだろ?
やっぱ似ているからか?
ギリシャ美術のコピー?
ローマ美術は「ギリシャ美術のコピー」と言われることもあるの。
事実、ローマ人はギリシャ美術を積極的に模倣したのよ。
そういえば、ギリシャ美術の記事でもそんな話があったな!
始まりから順を追って説明するわね。
ローマ人が統一する前のイタリア半島では、エトルリア人によるエトルリア美術が栄えていたの。
ローマ美術は、そのエトルリア美術とイタリア統一後に征服した古代ギリシャの美術の両方から影響を受けているのよ。
影響を受けただけならコピーとは言えなくねぇか?
ところがローマ人は、特にギリシャ美術にとても惚れ込んでギリシャ人の工芸家を雇ったのよ。
だから、実質制作をしていたのはギリシャ人だったの。
なんだって!
そりゃ確かにコピーって言われるのも分かるな〜。
そういうこともあって美術史的には
「ローマ人は芸術的な創造性が低かった」
と言われることもあるわ。
けど、理想的な美を追求したギリシャ人と比較するからそう評価になってしまったと思うのよ。
独自に発展した建築
実際、ローマ人は都市開発に力を入れて後世の手本となるような建築技術を発展させていったのよ。
確かにローマ人はインフラを整備して経済発展し、一大帝国を築いたんだもんな!
ちなみに、具体的にはどんな建築があるんだ?
例えば、高い丘の上にあったセゴビアの町に水を引くために水道橋を作ったり、
現在はスペインの都市であるセゴビアの水道橋。
参照:Wikipedia
大衆浴場にギュムナシオン(ギムナシウム)(※1)、図書館やギャラリーなどを併設した複合施設を作ったりしたの。

トラヤヌス帝の時代に作られた複合施設。
(※1)ギュムナシオン(ギムナシウム):今で言うところのジム。
えっ……。
スーパー銭湯よりすげぇじゃん……!
イオンモール作っているレベル……!
たとえがずいぶんと俗っぽいわね。笑
リアルからデフォルメへ
ローマ美術が、ギリシャ美術を模倣しつつも建築分野で独自の発展をしたっていうのは分かったぜ。
ところで、古代ギリシャでたくさん作られていた彫刻はどうだったんだよ?
すごく簡単に言うと、だんだんとデフォルメ(※2)されていったわ。
(※2)デフォルメ:彫刻などで、意図的に対象を変形したり歪曲したりすること。
え〜?!
せっかく古代ギリシャ人がリアリティーのある表現を極めたのになんでまた?!
民主政だった古代ギリシャと違って、古代ローマは帝政だったの。
要するに、ローマ皇帝に権力が集中していたのよ。
その結果、理想の美を持った神々を表現するためではなく、権力者の威厳を示すために彫刻が作られるようになったわ。
そのデフォルメっぷりがよく分かる例が、代表作にもあった「コンスタンティヌス1世の頭像」よ。
コンスタンティヌス1世の頭像
325〜370年ごろ/カピトリーノ美術館
参照:Wikipedia
目でっっっっか!!!!
ギャルが可愛さを演出するために加工アプリを使うのと同じじゃねぇか!!
そうね、本質的には一緒ね。笑
「目力」という言葉があるだけあって、やっぱり目の印象を強くするのが威厳を表現するのにぴったりなんでしょうね。
ちなみにこのデフォルメの感じは、後のキリスト教美術(とりわけビザンティン美術)に引き継がれていくわ。
ポンペイ発掘がもたらしたもの
そうそう、ローマ美術を語る上で外せないのが「ポンペイ」という都市よ。
どうしてポンペイが重要なんだ?
ポンペイは79年のヴェスヴィオ火山の噴火で埋もれてしまった古代ローマの都市。
1748年に再発見されて、その後時間をかけて発掘が進められたの。
それにより、ほとんど現存していなかったローマ美術の絵画が数多く見つかったのよ。


あれま!
こんな赤裸々な壁画まで……!
こうやって当時のローマ人の様子が分かるものがたくさん発掘されて、ローマ美術の理解がより深まったのよ。
さらに言うと、このポンペイ発掘によって
「古代ギリシャ・ローマの美術を模範にするぞ!」
という美術の潮流が生まれたくらい、発掘していた当時のヨーロッパの画家たちにも大きな影響を与えたの。
ちなみに、こうやって発掘されて見つかった絵画にはなんらかの共通する特徴があったのか?
細かく言うといろいろな特徴があるけど、壁画は赤い背景のものが多くて「ポンペイ・レッド」と呼ばれているわ。
代表作で紹介した「ディオニュソスの秘儀」がまさにそうね。
ポンペイ・レッドで描かれている「ディオニュソスの秘儀」。
参照:Wikipedia
世界最古の絵画技法
それと古代ローマでは、世界最古の絵画技法とも言われる「エンカウスティック」という技法が開発されたのよ。
エンカウスティック?
それはどういう技法なんだ?
エンカウスティックは、蜜蝋(ミツバチの巣の外壁から精製した蝋)と顔料を混ぜて作った絵の具で描く技法よ。
ミツバチの巣?!
すごいものを絵の具にしたんだなぁ。
ローマ支配下にあったエジプトで作られた「ミイラ肖像画」で、このエンカウスティックという技法がよく使われていたわ。

ミイラの顔の部分に置かれた。
ちなみに、20世紀のアメリカの画家「ジャスパー・ジョーンズ」がエンカウスティックを用いて作品を作っているわね。
ジャスパー・ジョーンズ
参照:【世界文化賞 受賞者のことばから】第5回(平成5年) – 産経ニュース
ジャスパー・ジョーンズ「旗」
参照:Jasper Johns. Flag. 1954-55 (dated on reverse 1954) | MoMA
現代でも作品制作に使える技法を2,000年も前に開発していたなんて、ローマ人はすげぇな〜。
「ローマ美術」が見れる場所は?
そんなローマ美術が見られる場所は、日本国内だとなかなか無いわね。
ギリシャ美術で紹介した「京都ギリシアローマ美術館」くらいしか無さそうだな。
ただ、ギリシャ美術と比べると建築物はたくさん遺っているから、実際にローマなどへ行って観光するのも良いと思うわ。