「ポスト印象派」を分かりやすく解説!

「ポスト印象派」を分かりやすく解説!

今回はポスト印象派について紹介していくわね。

「ポスト印象派」の代表作は?

では、まずポスト印象派の代表作を見ていきましょう。

ポール・セザンヌ「カード遊びをする人々」
ポール・セザンヌ「カード遊びをする人々」
1894〜1895年/オルセー美術館(フランス)
ポール・ゴーギャン「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」
ポール・ゴーギャン「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」
1897〜1898年/ボストン美術館(アメリカ)
フィンセント・ファン・ゴッホ「星月夜」
フィンセント・ファン・ゴッホ「星月夜」
1889年/ニューヨーク近代美術館(アメリカ)

ポスト印象派って言われるとパッと思い浮かばないけど、画家と作品は知っているものばかりだったぜ!

「ポスト印象派」の特徴は?

次に、ポスト印象派の特徴について解説していくわね。

ポストは「〜の後」の意味

印象派は分かるけど、ポストがどういう意味なのか気になるな〜。

“post”は、フランス語や英語で「〜の後」という意味がある接頭辞よ。

なるほどな!

ってことは、ポスト印象派は印象派の後」って意味か。

そうね。

ちなみに、かつて日本ではこのポスト印象派を「後期印象派」と翻訳していた時期があったわ。

今は「後期印象派」って言わないのか?

言わないことが多いわね。

これはもう言葉の持つイメージの問題だけど、

ポスト印象派
印象派の後に起こった潮流

後期印象派
印象派の潮流の中の後半

と比較すると、後期印象派は実際とちょっとニュアンスが違うのよね。

ということは、印象派とは別物っていう感じなのか?

そのとおりよ。

ポスト印象派と印象派の違いについては、次の章で紹介するわね。

印象派を批判しつつ受け継いだポスト印象派

ポスト印象派は、印象派が台頭した後の1880年代から活躍しだしたの。

やっぱり「印象派の後」という名前のとおり、時代的には印象派の後なんだな。

それで、ポスト印象派と印象派は何が違うんだ?

印象派は、印象派の記事でも紹介したとおり、自然の光を描こうとした一派だったわよね?

そうだな。

一方のポスト印象派の画家たちには、印象派ほど作風の共通性が無いわ。

そうなのか?

じゃあどうして「ポスト印象派」とひと括りにされているんだ?

ポスト印象派は、印象派を批判しつつも受け継ぎ、印象派を超えようとした画家たちを指すのよ。

なるほど〜。
作風ではなく印象派に対する態度に共通性がある画家たちを、まとめて「ポスト印象派」と呼んでいるってことか……!

そのとおりね♪

だから、ポスト印象派の画家たちはそれぞれ印象派から受け継いだもの以外に、独自に表現を開拓していき、20世紀の美術の先駆けとなったのよ。

そうなってくると、ポスト印象派にどんな画家たちがいたのか気になるぜ〜。

主な画家はセザンヌ、ゴーギャン、ゴッホの三人

ポスト印象派と言われているのは主に、

ポール・セザンヌ
ポール・ゴーギャン
フィンセント・ファン・ゴッホ

の三人の画家よ。

日本でも比較的馴染みがある画家たちだな!

さっきも触れたように、彼らは共通の表現や理念を持って制作をおこなっていたわけではないの。

ただ、印象派の影響を受けながらも独自の表現を開拓していったという点で、「ポスト印象派」と言われているわ。

それぞれの画家は、印象派からどんな影響を受けて、どんな表現を開拓していったんだ?

ポール・セザンヌ

まずはセザンヌ。

セザンヌは、実は第1回と第3回の印象派展で展示しているわ。

セザンヌの本人写真
ポール・セザンヌ
1839〜1906年/フランス

ってことは、印象派と行動を共にしていた時期もあったんだな?

そうね。

ただセザンヌは、反体制的な印象派展だけでなく、体制側のサロンにも応募を続けていたの。

それが、一部の印象派の画家との対立を生んで、セザンヌは印象派と距離を置いたのよ。

あ〜、印象派は、
「サロンに応募するのはありか無しか」
でずっとモメていたもんな……。

セザンヌはその後もずっとサロンに応募し続けたものの、良い結果を残すことができず困窮したわ。

サロンに落選し続けたってことは、裏を返せば、新しいチャレンジをし続けていた画家だったってことなんだろうなぁ。

そう言えるわね。

で、セザンヌは印象派から離れた後に、モチーフの「形態」に強く惹きつけられたわ。

形態?

形態は、
奥行きや立体感によって表現される、そこにその物がある感じ
と言ったところかしらね。

実は、光の表現を優先した印象派の弱点が、この「形態」の表現だったのよ。

なるほどな……!
セザンヌはどうやって形態を表現したんだ?

セザンヌは、
どんな物も面によって構成されている
と考え、その面をいかにして画面に構成するかを追求したわ。

セザンヌの晩年の作品。
面によって構成されているのがよく分かる。
セザンヌの晩年の作品。
面によって構成されているのがよく分かる。

面……?!
モチーフを幾何学(※)的に捉えたってことか……!

※脇侍:信仰の中心となる仏の左右に控える菩薩や明王、天などのこと。

セザンヌは、
「自然は、球、円錐、円柱によって構成されている」
とも言っているわ。

このセザンヌの形や空間の捉え方は、後にパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックが創始したキュビスムに多大な影響を与えたのよ。

確かに着目している点がかなり近い感じがするな!

ポール・ゴーギャン

次はゴーギャン。

ゴーギャンは、第4回から第8回まで印象派展に出展していたわ。

ゴーギャンの本人写真
ゴーギャンの本人写真

ゴーギャンも印象派展に出ていたんだな!

そう。
ゴーギャンは最後の印象派展である第8回まで出展していたものの、そこで台頭してきた新印象派の画家たちと対立したの。

あらら……。

ゴーギャンは印象派と分かれた後、総合主義というスタイルを確立したわ。

総合主義はどんなものだったんだ?

総合主義は、

「芸術は、

1.自然形態の外観
2.主題に対する画家自らの感覚
3.線・色彩・形態についての美学的な考察

の三つの要素を総合するべき」


という考え方をしたの。

おお……、ちょっと難しい感じがするぜ……!

三つの要素を、ミカンを描くことを例に説明すると、

1.実物のミカンの形を捉えること
2.ミカンに対して画家が感じたこと
3.ミカンの線・色・形をどう表現するか考えること

という感じね。

少し分かりやすくなった気がする……!

総合主義を確立したときのゴーギャンは、印象派や新印象派に対して批判的だったの。

だから、印象派の課題であった、

・描かれるものの形が曖昧
(光を表現しようとするあまりに)

・画家の主観や感情を軽視
(見えている世界を描こうとするあまりに)

反発するスタイルになったのよ。

なるほどな……!

だから、形態という言葉を繰り返し使ったり、「画家自らの感覚」を重視したりしたんだな〜。

画家の主観と描かれる物という客観を画面の上で統合したゴーギャンのスタイルは、ナビ派に継承されていくわ。

フィンセント・ファン・ゴッホ

ラストはゴッホね。

ゴッホは特に印象派展に出展したとか、印象派の画家たちと活動を共にしたわけではなかったけど、印象派から多大な影響を受けているの。

ゴッホの自画像
ゴッホの自画像

そうだったんだな……!

ゴッホは最初、印象派を含め同時代のさまざまなスタイルを取り入れて絵を描いたわ。

そうして確立したのが、多くの人が知っている

・うねるようなタッチ
・厚塗り
・特徴的な色合い


といった特徴だよな!

絵を比較するだけでゴッホと印象派と違うのはなんとなく分かるんだけど、具体的には何がどう違ったんだ?

一番の大きな違いは、
ゴッホにとっての色やタッチは自身の内面を表現するためのものだった
ということね。

なるほどな……!

画家の主観を重視するところはゴーギャンと似ているわ。

でも、ゴッホは思想や哲学といった理性的なものではなく、より感情的なものを表現しているところに個性があるわね。

ゴッホが日本で人気なのは、絵に込められた感情をうちらが感じとっていることも関係しているのかもなぁ。

そんなゴッホのスタイルは、表現主義やフォーヴィスムといった20世紀の美術に多大な影響を与えたのよ。

「ポスト印象派」が見れる場所は?

国内にポスト印象派の作品がまとめて見られる場所ってあるのか?

ポスト印象派としてまとめられていることはあまり無いわね。

でも、セザンヌもゴーギャンもゴッホもそれぞれが著名な画家なので、それぞれの作品を所蔵している美術館は全国にあるのよ。

(ものすごく多いので、この記事内では割愛するわね)

まぁ、ポスト印象派は共通の理念を持って行動を共にしていたわけじゃないしな〜。

もし、ポスト印象派自体についてもっと理解を深めたいという人がいたら、書籍で学ぶのがおすすめね。

セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホそれぞれの作品をじっくり見てみたいなら、それぞれの画家の画集がおすすめだな!

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