「ラファエル前派」を分かりやすく解説!

「ラファエル前派」を分かりやすく解説!

今回はラファエル前派について紹介するわね。

「ラファエル前派」の代表作は?

まずはラファエル前派の代表作を見ていきましょう。

ジョン・エヴァレット・ミレー「オフィーリア」
ジョン・エヴァレット・ミレー「オフィーリア」
1852年/テート・ブリテン所蔵(イギリス)
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「受胎告知」
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「受胎告知」
1850年/テート・ギャラリー所蔵(イギリス)
ウィリアム・ホルマン・ハント「雇われ羊飼い」
ウィリアム・ホルマン・ハント「雇われ羊飼い」
1851年/マンチェスター市立美術館所蔵(イギリス)

シェークスピアの戯曲・ハムレットの登場人物を描いた「オフィーリア」は見たことある人が多いかもしれないな!

「ラファエル前派」の特徴は?

では、ラファエル前派の特徴について解説していくわね。

秘密結社的な美術グループ

ラファエル前派は、ロイヤル・アカデミー付属美術学校の同級生であったロセッティ、ミレー、ハントの三人が1848年に結成したグループなの。

同時代で作風が似ていたから同じ潮流の扱いにされたわけではなく、自分たちでそう名乗っていたんだな!

結成して間もなく、彼らは自らの絵の中に「P.R.B.」という署名をするようになったわ。

その「P.R.B.」ってなんだ?

これは、「Pre-Raphaelite Brotherhood」の略なのよ。

直訳すると「ラファエロ以前兄弟団」という意味になるわね。
これこそが、ラファエロ前派のことなの。

兄弟団って、なんかワンピースの麦わらの一味みたいな「仲間」って感じがしていいな!

ちなみに、三人が使い始めた「P.R.B.」という署名は、当初は彼ら以外誰も意味が分からなかったわ。

要するに、彼らの間だけで共有している合言葉のようになっていたの。

なんか秘密結社みたいなグループだったんだな〜。
面白いな!

アカデミック美術への反発

ラファエロ前派が、学校の同級生同士で結成された秘密結社みたいなグループだっていうのは分かったけど、どんなグループだったんだ?

その話をするために重要なのが、「ラファエル前」「ラファエロ以前」といったキーワードよ。

歌琳さん、ラファエロって誰のことか分かるかしら?

え、美術史でラファエロって言ったら、ルネサンス美術の大巨匠のラファエロ・サンティのことだよな?

大正解♪

ラファエル前派の言う「ラファエロ」も、そのラファエロのことを指しているわ。

ラファエロの自画像
ラファエロの自画像。
ラファエロ・サンティ「アテナイの学堂」
ラファエロの代表作、「アテナイの学堂」。
19世紀半ばの美術学校ではラファエロを模範とするのが当たり前だった。

なるほどな〜。
で、何がラファエロの前なんだ?

その話をする前に、彼らがどこで出会ったかを思い出してみてほしいの。

えーと、ロイヤル・アカデミー付属美術学校だっけ?

確か、ロイヤル・アカデミーはイギリス最古の国立美術学校だったよな〜。

そう。

で、そのロイヤル・アカデミーでは、
「古典(ルネサンス)にならいましょう!」
という教育をしていた
のよ。

当時の美術学校は、
「ルネサンスこそが理想で、ラファエロが一番の芸術家」
という教育方針だった
んだよな!

……あっ!

……気付いたわね。笑

ロセッティ、ミレー、ハントの三人は、
「『ラファエロが正解』って決めつける教育に従ってたまるか!」
というアカデミック(学校教育的な思想)への反発で、ラファエル前派を結成したのよ。

なんかパンクバンドの結成時みたいなエピソードだな……!笑

自然に忠実な細密描写と鮮やかで明るい画面

ラファエル前派は、ラファエロ以前の中世や初期ルネサンスの美術を模範として、「自然に忠実であること」を追求していったわ。

自然に忠実……。
具体的にはどんな感じだったんだ?

描かれるモデルが伝説や架空の存在であっても、できるだけ現実味のある「人間」として描いていたわね。

ロセッティの受胎告知で天使・ガブリエルが妙に人間味あふれているのは、ファンタジーではなくリアルに描いているからなんだな〜。

ただ、ラファエル前派は部分的な細密描写によってリアルさを表現したの。

だから、不自然にアトリビュート(※)が置かれたり、遠近法がおかしかったりしていることがあるわ。

※アトリビュート:伝説や歴史上の人物、神話上の神などと関連付けられた持ち物。その物があることで、描かれている人物が誰なのかを特定する役割がある。

あとラファエル前派の特徴として、明るくて鮮やかな画面もあるわね。

確かに、全体的に明るい印象があるな。
暗いところは暗すぎず、明るいところは明るすぎずでコントラスト(明暗差)が低い感じ。

色彩も豊かで、実際に目に見えている世界より彩度が高く感じるぜ!

そうね。
ラファエル前派は自然に忠実であろうとしたものの、色の鮮やかさや部分的な細密描写によってファンタジックにも感じられて面白いわね。

たった数年の活動で散り散りに

ラファエル前派は、同時代の写実主義バルビゾン派と比べると明確な理論を掲げて活動していたグループではなかったの。

アカデミックへの反発という共通意思はあったものの、特に「こういう理念でやっていこう」というのを強く掲げてはいなかったんだな。

そう。

だから、活動開始からたった5年でみんな散り散りになってしまったの。

あらま……。

ロセッティ、ミレー、ハントはそれぞれどうなったんだ?

まず、彼らの関係性に陰りが見えたきっかけの一つが、1853年にミレーがロイヤル・アカデミーの準会員になったことよ。

え?!
ロイヤル・アカデミーって、ラファエル前派が反発していたアカデミックだよな……?

そうね。
でも、ミレーとしては仕方がない部分があるの。

結婚して子供が8人もいたミレーは、妻や子供を養っていく必要があったわ。

アカデミックのアンチであるラファエル前派として活動し続けると、画家として食べていくことができなかったのよ。

なるほど……。
いろいろ事情はあるんだな……。

それで、他二人はどうしたんだ?

ロセッティとハントは、ハントの恋人をロセッティが奪ったことで仲違いしたわ。

まさかの痴情のもつれかよ!!!

ハントの恋人でありモデルでもあった女性の名前はアニー・ミラー。

ハントが旅をしている最中に、アニーはロセッティと恋に落ちて浮気。

当然だけど、ハントは「ゲイブリエル(ロセッティ)、許すまじ!」とブチギレ。
二人の友情は終わってしまったの。

始まりもすごかったけど、終わりもはちゃめちゃだったな……。笑

「ラファエル前派」が見れる場所は?

日本国内でラファエル前派の作品がまとめて見られる場所は残念ながら無いのよね。

ラファエル前派についてもっと知りたいなら、書籍や画集を購入するのがおすすめだぜ!

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