「初期キリスト教美術」の代表作や特徴、時代背景を分かりやすく解説!

「初期キリスト教美術」の代表作や特徴、時代背景を分かりやすく解説!

今回は、初期キリスト教美術について解説していくわ。

西洋美術史と切っても切れないキリスト教がついに出てくるんだな!

「初期キリスト教美術」の代表作は?

初期キリスト教美術は、後で説明するけどあまり多くの作品が遺っていないの。

だからここでは、代表作というよりあくまで一例として紹介するわね。

パンを祝福する羊
4世紀後半/コモディッラのカタコンベ(ローマ)
会食の図
3世紀後半/サン・カリストのカタコンベ(ローマ)
サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂
431年/ローマ

絵っぽいのと建築があるな!

「初期キリスト教美術」の特徴は?

初期キリスト教美術にはどんな特徴があるんだ?

そうね。
初期キリスト教美術の特徴を解説する前に、まずキリスト教がどういう経緯で始まったのか簡単に紹介するわね。

キリスト教の出現

キリスト教の大元となったのは、1世紀ごろにパレスチナのガリラヤという土地で宗教活動を始めた「ナザレのイエス」という人物の教えなの。

ナザレのイエス?
それは、イエス・キリストとは違う人なのか?

いえ、同一人物よ。
ただ、イエス・キリストという呼び方はナザレのイエスの
弟子たちが彼の死後にそう呼んだ
だけ。

そのナザレのイエスはどんな教えを説いたんだ?

例えば、

・人間は平和の神の子として平等であること
・神は父なる神であること
・日々の祈りをもって神とともに歩むこと
・隣人を大切にして生きること


などを説いたの。

へ〜、いいこと言ってんな!
で、ナザレのイエスはそういった教えを
「私の教えこそがキリスト教だ〜!」
と伝えたってことか。

う〜ん、正確に言うとちょっと違うわね。

確かにナザレのイエス自身も布教活動はしていたけど、主には彼が亡くなった後に弟子たちがキリスト教を世界中に広めていったの。

弟子たちの熱量すごいな!

そうね。
弟子たちはナザレのイエスの教えを伝えるだけでなく、ナザレのイエス自体を
「ナザレのイエスはキリスト(救世主)だ!」
「イエスは神の子だ!」

として持ち上げたのよ。

キリストって救世主って意味だったのか!

そんな熱量高めの弟子たちは、方々へ布教活動をしていくわ。

当時、地中海世界で一大勢力を築いていたローマ帝国にもキリスト教は布教されたのよ。

ローマ帝国の人たちはどういう反応だったんだ?

さっきも言ったようにイエスの教えには「人間は神の下で平等」というのがあったのよ。

だから、まず社会的に弱者であった貧民や奴隷たちに浸透していったわ。

他の人たちはどうだったんだ?

ローマ皇帝たちは当初、「異教だ!」とキリスト教は迫害したわ。

もともとの自分たちの信仰と違うんだからそりゃそうか……。

けど、迫害を受けながらも徐々に信仰が広がっていき、古代ローマの上流階級までがキリスト教を信仰するようになるのよ。

そしてついに、313年のミラノ勅令でそれまでは異教扱いされていたキリスト教が公認されたの。

えっ!たった200年ちょっとで公に認められる宗教になったのか!
キリスト教、すげぇな〜!

さらに397年にはキリスト教がローマ帝国の国教になったわ。

国の宗教にまで?!

そうよ。
ローマ帝国で広く信仰されたことが、西洋美術史を語る上でキリスト教が外せなくなった一因と言えるわね。

なんでキリスト教はローマ帝国でそんなに広まったんだ?
当時の他の教えとどう違ったんだ?
どうして……

歌琳さん、キリスト教自体に興味が湧くのは分かるけど、ここでその話をすると脱線してしまうわ。

なので、もしキリスト教そのものを知りたいなら書籍などを読んでみると良いわね。

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キリスト=羊?魚?

さて、キリスト教がどういう経緯で誕生したかを話したので、初期キリスト教美術の話に入りましょう。

ここからは美術の話だな!

さっきも話したとおり、313年のミラノ勅令の前まではキリスト教は認められていなかったの。

ああ、言ってしまえば新興宗教みたいな扱いだったんだよな?

そうよ。
当時のキリスト教信者は、そうでない人たちから迫害を受けていたの。

だから、当時の信者たちはカタコンベと呼ばれる地下墓所にひっそりと集まっていたわ。

ローマにあるサン・カリストのカタコンベの様子。
中央右下の奥に横たわっている彫刻は1599年に作られたもののコピー。
参照:アンティークアナスタシア 神戸北野町 キリスト教に関するレファレンス カタクンバエ、カタコンベ CATACUMBAE, catacombe

今じゃ「クリスチャンだ」って言っても迫害されないし、世界中に教会が建っているけど、最初期のキリスト教徒は大変だったんだなぁ……。

当時の信者たちはカタコンベの天井や壁にイエスを描き、祈っていたのよ。

代表作でも紹介した「パンを祝福する羊」。

ん……?
イエスの姿はどこにあるんだ?
羊しかいねぇぞ?

ふふふ♪

その羊がイエスよ。

え〜〜?!
なんでだ?!
だってイエスって元は人間だろ?

そうね。
これには大きく分けて二つ理由があるのよ。

まず一つは、当時のキリスト教は厳しく偶像崇拝を禁じていたことがあるわ。

偶像崇拝ってなんだ?

神の子であるイエスを人の姿で表現してそれを崇拝することよ。

え〜?!
なんでそれが禁じられたんだよ?

うちだったら、推しのアイドルがいたら部屋にポスターを貼って毎日拝むぞ!

気持ちは分かるわ。笑

でも、イエスは人々を導く神の子よ。
救いを求めている者たちと同じ姿で描くのは恐れ多いわよね。

なるほどな〜。

でも、なんで羊なんだよ?

これは、キリスト教の正典の「新約聖書」の一書であるヨハネによる福音書の中で、
「私は善き羊飼いである」
とキリスト自身が語った記述があることが関係しているわ。

それで、羊の姿で描かれたり羊飼い(※1)の姿で描かれたりしたの。

(※1)
羊飼いの姿を描くのは偶像崇拝にあたらないの?と思った方がいると思います。
これはイエス・キリストに羊飼いのコスプレをさせて描いているわけではなく、羊飼いという記号を使用してイエス・キリストを連想させているに過ぎないので偶像崇拝には当たらないのです。

なるほどな〜。

イエスが別の存在で描かれた二つ目の理由は、信者にしか分からないように表現したからよ。

なんで信者にしか分からないようにする必要があったんだ?

歌琳さん、ちょっと想像してみてほしいの。

当時のキリスト教徒は、カタコンベでひっそり崇拝しないといけないくらい迫害されていたのよ。

それが堂々とイエスの姿を描いていたら……?

あっ……!

だから、別のものに置き換えて描いていた、というのもあるのよ。

ちなみに、羊以外だと魚として描かれることもあったわ。

魚として描かれたイエス・キリスト。

えー?!
なんで魚なんだよ?

まさか聖書の中でイエスが「私は魚だ」って言っていたとか……?

さすがにそれは無いわ。笑

イエスが魚として描かれた理由は面白くて、

・イエス
・キリスト
・神の
・子
・救世主

という五つのギリシャ語の頭文字をとると、

イクトゥス(魚)


というギリシャ語になるのよ。

すげぇ!
めちゃくちゃ暗号っぽい!

といった具合に、初期キリスト教美術ではイエスの姿が羊や魚といった記号として描かれたのよ。

ただ、

・313年のミラノ勅令でキリスト教が公認
→迫害されることが減った

・325年のニカイア公会議で「イエスには神の性質だけでなく人間の性質もある」と正式に認定
→偶像崇拝禁止の教えが緩んだ

といった出来事を経て、徐々に記号として描かれることがなくなっていったわ。

なぜ表現にリアリティーが無い?

偶像崇拝の禁止が緩んでからはイエスの姿を描いた絵も出てくるわ。

偶像崇拝禁止の縛りが緩んでからは、イエスが人の姿で描かれることも増えた。

なぁ、ルネちゃん、ちょっと質問なんだけどさ。

初期キリスト教美術の前身になっているローマ美術やギリシャ美術では、かなりリアルな質感で作られた彫刻がたくさんあったよな?

なんでこんなリアリティーの無い表現になっちまったんだ?

初期キリスト教美術の絵画表現にリアリティーが無い理由の一つは、
偶像崇拝が禁止されなくなったものの、やっぱりイエスを血肉の通った人間として描くのは恐れ多い
というのがあるわ。

あ〜、確かにな〜。
推しのアイドルの似顔絵が毛穴とかシワまでリアルに描かれていたら嫌だもんな……。

(歌琳さんの推しのアイドルって誰なのかしら……?)

それと、前身のローマ美術も帝国が栄えて皇帝の権力が大きくなってからは、権力者の強さをアピールするあまりにリアルに表現されなくなったのよ。

参照:コンスタンティヌス1世 – Wikipedia

あ!
目をでっかくして強さアピールしているヤツだ!

それぞれ理由は違うけど、ローマ美術と初期キリスト教美術は、「リアルに表現しない」という部分で奇妙なマッチをしたの。

ガチ盛りのローマ美術と、デフォルメ(※2)の初期キリスト教美術……。

宣材写真で肌を綺麗にしたり体型をシュッとさせたりするのとやっていることは同じだな〜。

それが、アイドル(イエス)か会社の社長(ローマ皇帝)かの違いだけで。笑

(※2)デフォルメ:人物の特徴を強調して簡略化・省略化する表現方法のこと。日本の漫画のキャラクターなども人の姿をデフォルメしたものと言える。

教会建築とモザイク

イエスを人間として表現しないようにしたという話をしたけど、逆を返せば、信仰から生まれた精神世界を表現しようとしたとも言えるのよね。

そうとも言えるな。

380年にキリスト教がローマ帝国の国教となってからは、堂々とキリスト教の教会が建築されるようになったの。

その教会建築でも精神世界を表現しようという試みが見られるわ。

例えば、この教会建築。
外観はレンガ造りで質素な感じよね。

サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂(外観)
参照:サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂|ラヴェンナの初期キリスト教建築物群 |世界遺産オンラインガイド

でも、内部はこんな感じになっているのよ。

サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂(内観)
サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂(内観)のモザイク部分

あれ?
外観が違って豪華だな!

これはモザイクか?

そのとおり♪

メソポタミア美術やギリシャ美術でも見られた「モザイク」の技法で作られた天井画や壁画ね。

当たったぜ!

モザイクは昔から神の世界を表現するのに用いられてきたみたいだな。

そう。

モザイクはガラス、貝殻、石などを散りばめて大きな絵を描き出す技法なので、リアルに描くことができないの。

だから……

だから、精神世界を描くのにぴったり!
ってことだよな!

そういうこと!

そのモザイクをあしらって内観を豪華にしているのは、まさに神秘的な精神世界(死後の世界)を表現しているからよ。

そして一方で、外観が質素なのは我々が生活する現実(地上の世界)を表現しているの。

建物の外と中を地上の世界と死後の世界で対比するのは、分かりやすく神聖な感じがしていいな!

「初期キリスト教美術」が見れる場所は?

初期キリスト教美術を鑑賞したい場合、どこへ行けばいいんだ?

313年のミラノ勅令以前の迫害されていた時期の美術は、現地にもなかなか遺っていないようね。

ただ、それ以降のものであれば遺っているものもあるわね。

少ないとは言っても、教会建築やカタコンベの中には遺っているものがあるみたいだから、イタリアへ鑑賞旅行へ行くのは良さそうだな!

そうね♪

ただ、国内だと見られる場所はほとんど無さそうなので、
「ヨーロッパへは行けないけど、どうしても見たい!」
っていう人は書籍を購入すると良いと思うわ。

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ビザンティン美術と一緒の扱いになっている本が多いみたいだな?

初期キリスト教美術とビザンティン美術はわりと似ているので、一くくりにされていることが多いようね。

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