画家「グスタフ・クリムト」を分かりやすく解説！

今回は、20世紀初頭に活躍したウィーンの画家グスタフ・クリムトを紹介するわね。

まず、クリムトの代表作をいくつか紹介していくわね。

では、クリムトという画家がどういう人だったか紹介していくわね。

グスタフ・クリムトは1862年にウィーン郊外で生まれたわ。

お父さんは金細工師で、お母さんはミュージカルのパフォーマーだったの。

クリムトは七人兄弟の2番目。
男兄弟は二人いて、弟の一人のエルンストは画家、もう一人のゲオルグは彫刻家だったのよ。

そういう家族だったこともあって、クリムトは14歳でウィーン工芸美術学校に入学して絵画を学び始めたの。

17歳のときには友人や弟のエルンストと一緒に起業して、劇場や邸宅の装飾画の制作をおこなうようになったわ。

クリムトたちが手掛けた、聖書や神話などをテーマに伝統的な技法で描いた装飾画は大好評。

1888年、クリムトが26歳のときには皇帝賞も受賞しているのよ。

さらに1891年には、当時のウィーン美術界の中心的存在だった団体「キュンストラーハウス」の会員としても認められたわ。

でも、1892年にクリムトの人生を変える大事件が起こるの。

1892年の7月に金細工師の父が亡くなり、同じ年の12月には画家の弟エルンストが亡くなってしまうの。

そう。
特に一緒に起業し、一緒に仕事をしていた弟エルンストの死は大打撃だったわ。
結局その後、装飾画制作の会社は解散することになったの。

クリムトは考えたわ。

自分の技術があればクライアントの意向に従った絵を描いて仕事にしていくことはできる。
それで、一生安泰にやっていくこともできる。

でも自分も、父や弟のように若くして亡くなるかもしれない。
そのとき本当に後悔しないだろうか、と。

そしてクリムトは、美術史に残る一歩を踏み出したの。

それが、「分離派」の結成だったわ。

分離派（ドイツ語ではゼツェシオン）は、
過去の芸術様式から分離して、生活や機能と結びついた新しい造形芸術を創造することを目指したグループ
だわ。

クリムトが立ち上げたのはウィーン分離派で、ウィーン以外にもドイツのベルリンやミュンヘンで同様に分離派が生まれたの。

分離派の活動を通してクリムトが発表した作品が「ベートーヴェン・フリーズ」よ。

ただ、この作品を発表した当時は「卑猥だ！」と言われて非難の的になったのよ。

しかも、この展示がきっかけでクリムトは国からも見放されてしまったわ。

クリムトはウィーン分離派としての活動の中で自分の考える美を追求し続けたの。

そして、一つの答えとしてたどりついたのが「黄金様式」だったわ。

そう。
きっと多くの日本人が「クリムトといえばこの作品！」だと思っている、代表作の四つはまさに「黄金様式」の作品なの。

黄金様式のスタイルには、

・金細工師だった父親の存在
・若いころの装飾画家としての活動
・父と弟の死
・自身が好きだった日本美術の影響
・古い体制の美術界への反発

といった、これまでのクリムトの人生を集大成しているような趣があるわね。

クリムトはこの金箔をあしらった黄金様式で、富裕層の人々から注文を受けて肖像画を描き大人気になったの。

そうね、これはいろいろな理由があるんだけど、クリムトが女性から凄まじくモテたことは少なからず関係していると思うわ。

クリムトは生涯結婚しなかったんだけど、何十人ものモデルの女性と関係を結んで、非嫡出（※1）の子供は14人もいたと言われているのよ。

クリムトは数多の女性と関係があったけど、弟の奥さんの姉であるエミーリエという女性をもっとも愛したと言われているわ。

代表作の中でももっとも日本人に知られていると思われる「接吻」は、エミーリエがモデルになっていると言われているのよ。

1918年に脳梗塞と肺炎で亡くなったクリムトの最期の言葉も「エミーリエを呼んでくれ」だったわ。

では、クリムト作品の特徴について紹介していくわね。

ここでは、一般的にもっとも知られている黄金様式のときの作風について触れるわ。

絵のモデルのほとんどが女性な理由の一つとして、クリムトがプレイボーイだったことを挙げたけど、それだけではないのよね。

クリムトが活躍したころは「世紀末美術」が流行していたの。

いえ、あくまで一定の傾向を持った芸術の一群を指しているだけよ。

世紀末美術では「ファム・ファタル（運命の女）」と呼ばれるモチーフが流行っていたの。
ファム・ファタルはただの運命の相手ではなく、妖艶な魅力で男をとりこにする魔性の女としての性格が強いわ。

クリムトの作品の特徴の一つとしては、このファム・ファタル的な官能性があるわ。

そして、もう一つあるのが死の香りがする作品が多いこと。

これらの作品ほど直接的でないにしても、どことなく死や消滅への恐れ、不安を感じさせるものが多いのよ。

それは、若くして亡くなった父や弟の影響が少なからずあると思うわ。

いえ。
実は古来からおこなわれてきた手法なのよ。

例えば、神様を描くときやキリスト教の祭壇画を描くときなどに、神々しい雰囲気を表現するために金箔をあしらうことはあったの。

そう。
だからむしろ、金箔を用いた表現は古臭いものだったのよ。

それは、古臭い表現を新しいやり方で取り入れたところよ。

クリムトの作品をよく見ると分かると思うけど、背景や飾りについては金箔を用いて平面的に描く一方で、人物の部分はかなり写実的なの。

クリムト作品の新しさは、質の違う表現を同じ作品の中に共存させたところにあるのよ。

しかもそれが高い完成度で表現できていること。

これこそが、今もなおクリムトの作品がわたしたちを魅了する理由だと思わ。

ウィーン分離派を結成してからのクリムトは、とにかく貪欲に古今東西の芸術表現を研究し取り入れたのよ。

その中には日本美術もあったわ。

これは琳派の代表的な画家・尾形光琳の作品よ。

クリムトの金箔の使い方は琳派の作品の影響を受けたと言われているわ。

クリムトは、個人的に日本美術をコレクションしていたくらい、ヨーロッパの画家の中でも特に日本美術に影響を受けたと言われる一人なのよ。

もしかすると、どことなく日本の美術に通ずる表現があるからこそ、クリムトの作品は日本人を惹きつけてやまないのかもしれないわね♪

クリムトはオーストリアはウィーンで活動した画家だったので、やはりウィーンに多くの作品があるわね。

とりわけ、ベルヴェデーレ宮殿の中にあるオーストリア絵画館には、代表作である「接吻」や「ユディトI」があるわ。

日本だと、

・宮城県美術館（宮城県）
・豊田市美術館（愛知県）
・愛知県美術館（愛知県）
・姫路市立美術館（兵庫県）

に作品があるわね。

あと、日本でも人気の画家なので定期的にクリムト作品を扱う企画展が催されるわ。