現代美術家「村上隆」を分かりやすく解説!

現代美術家「村上隆」を分かりやすく解説!

今回は現代美術家・村上隆について紹介するわね。

執筆時現在、世界的に活躍している日本の現代美術家だな!

「村上隆」の代表作は?

村上の代表作をいくつか紹介するわね。

村上隆「お花」

村上隆「お花」
参照:Takashi Murakami | Rainbow flowers smile! ! (2020) | Available for Sale | Artsy

村上隆「My Lonesome CowBoy」

村上隆「My Lonesome CowBoy」
1998年
参照:murakami, takashi m ||| contemporary art ||| sotheby’s n08441lot3mkc9en

村上隆「HIROPON」

村上隆「HIROPON」
1997年
参照:2002_NYR_01081_0316_000(043231).jpg (512×701)

村上隆「五百羅漢図」(部分)

村上隆「五百羅漢図」(部分)
2012年
参照:【展覧会リポート】すべて日本初公開! 村上隆の五百羅漢図展 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

なかなかに強烈なビジュアルの作品が多いよな……!
どうしてこういう作品を作っているのか気になるぜ!

「村上隆」はどんな人?

村上がどういう人物かについて解説するわね。

なんだか、日本国内では嫌われている印象があるんだよな〜。

そうね、海外のオークションで作品に高値がついている一方で、日本では村上をあまり評価していない向きはあるわね。

その点についても触れていこうと思うわ。

「二番だったから」で諦めた日本画家

村上は東京藝術大学の出身で、美術学で博士号も取得しているわ。

東京藝術大学って、芸術分野の東京大学のあの……!
めっちゃエリートだな!

そんなエリートの村上だったけど、もともとは日本画家を目指していたのを断念しているのよ。

えっ、そうなのか?

大学院の修士課程の修了制作で、村上は主席(一番)になれなかったの。

だから、日本画家になるのを諦めたわ。

だからって……、え……?
別に東京藝術大学で一番でなくても日本画家にはなれるだろ?
なんで辞めちゃったんだ……?

村上は完璧主義なの。
常に最上のものを目指しているわ。

それはキャリアにおいても作品制作においてもビジネスにおいても。

なるほどな……。
いや〜、でももしうちがその立場だったら、惜しくて日本画家への道を捨てられないけどなぁ……!

アート界きってのビジネスマン

村上はビジネスマンとしても優秀と言われているわ。

それはどうして?

村上は活動初期のころから、日本のアート市場に対して疑問を感じていたの。

日本のアート市場は欧米と比べてただ小さいだけでなく、あらゆる点で未熟。
だから、日本でアートをビジネスとして成り立たせるのは難しかったのよ。

そこで、村上は欧米のアート市場に自らを売り込んでいったわ。

なるほど、市場を分析して芸術家としての自分を戦略的に売りこんでいったのは、たしかにビジネスマンっぽいな!

村上のすごいのは、欧米で自身のキャリアを確立した後、日本に逆輸入したところ。

もちろん村上以外の日本の現代美術家にも、逆輸入をおこなった人はいるわね。

けど、戦略的に実行したのは村上くらいだと思うわ。

視座の高さや行動が、一般的な芸術家のイメージとはかけ離れているぜ……!

村上はただ戦略家なだけでなく、アートをビジネスとして捉えているれっきとしたビジネスマン。

だから、日本のアート市場をより大きくすることにも貢献しているの。

具体的には、有限会社カイカイキキを創業して若手芸術家の育成をおこなうなどしているわ。

自分で会社の経営もおこなっているのか……!

好き嫌いが分かれる

ここまで村上の話を聞いていて、うちはすげぇ人だな〜って思ったんだけど、周り見ると結構
「村上隆は嫌い」
と言う人も多い
んだよな〜。

そうね。
以前と比べると減った感じはあるけど、それこそ村上の作品「My Lonesome CowBoy」がサザビーズ(※)で16億円で落札された2008年ごろは、

「なんでこんな作品がこんな高値なんだ!」
「気持ち悪いし、誰でも作れそうな作品だな!」
「お金のことばかり考えて、芸術家の風上にも置けない!」


と批判されていたわね。

※サザビーズ:世界最古の国際競売会社で、ネット上でオークションを実施した世界初の美術品オークションカンパニー。

そうそうそう!

それに、ドキュメンタリー番組で若手芸術家に厳しく接する村上の態度が叩かれていたこともあったよなぁ。

村上が嫌われる大きな理由としては、

・アートをビジネスと捉えるスタンス
・アートを感覚で捉える日本人には理解しがたい作風
・日本のオタク文化を利用している感


といったところかしらね。

うん、そんなイメージだな〜。

はっきり言うけど、こういった意見は、

・アートへの誤った理解
・西洋美術史に対する無知
・欧米のアート市場に対する無知

による荒唐無稽な批判
と言えるわっ!(ピシャリ!)

ええ〜〜〜?!
言いきっちゃった!!

……コホン。

今回は、あくまで村上隆という現代美術家の概要を紹介する記事なので、作品の評価の根拠についてはくわしく触れないわ。

ただ、アートそのものや美術史、アート市場について知らないと村上作品の価値を適切に評価できないので、それはまた別で記事にするわね。

「村上隆」の作品の特徴は?

では、今度は村上の作品の特徴について解説するわ。

さっきもちらっと触れたけど、なかなか理解しがたい作風だから、どういう部分が評価されているのか知れると嬉しいな!

スーパーフラット理論

村上の一番大きな功績は「スーパーフラット理論」という新しい概念を生みだしたことよ。

スーパーフラット理論?

スーパーフラット理論について理解するためには、まず
・ハイカルチャー
・ローカルチャー
を知っておく必要があるわ。

ハイは高い、ローは低いってことだよな?

そうね。

まずハイカルチャーは、文学やクラシック音楽、古典絵画など上流階級がたしなむ文化のことを指すわ。

一方でローカルチャー(ポピュラーカルチャー)は、テレビやポピュラー音楽、大衆文学など、一般庶民がたしなむ文化のことを指すの。

なるほど、ハイカルチャーとローカルチャーが何かは分かったぜ!

それがスーパーフラット理論とどう関係するんだ?

スーパーフラット理論は、そのハイカルチャーとローカルチャーの境目を曖昧にする表現のことを言うのよ。

具体的にはどういうことなんだ?

村上の場合、浮世絵や琳派といった日本の伝統美術と、現代日本のポップカルチャーの間に、二次元性という類似点を見つけ、それを一つの画面の中で表現することに成功したの。

言葉だけ聞くと、分かるような分からないような……。

実際に比較してみるとイメージが湧くわ。

俵屋宗達「風神雷神図屏風」
琳派の祖とも言われる俵屋宗達の「風神雷神図屏風」。
改めて見ると、金箔をあしらった背景は、
日本のアニメ作品の背景のように感じられる。

TVアニメ「鬼滅の刃」キービジュアル

2019年にアニメ化され大ヒットした「鬼滅の刃」のキービジュアル。
デフォルメしたキャラクターと線画+塗りは日本のアニメの基本だが、
村上はそこに伝統的な日本美術との共通点を見いだした。
参照:『鬼滅の刃』TVアニメ化決定!アニメーション制作はufotable | SPICE – エンタメ特化型情報メディア スパイス

村上隆「727」

平面的な背景にのっぺりとした塗りのキャラクターが描かれている村上の作品「727」。
モチーフは現代的でありながら、表現は日本の伝統美術のようでもある。
参照:727

なるほど……!
なんだかちょっと分かった感じがするぜ……!

スーパーフラット理論は、ハイカルチャーとローカルチャーに共通する平面的な芸術表現だけを指すものではないの。

実は、現代日本の、ハイもローも無くすべてを一緒くたにしてポップに消費してしまう薄っぺらさも含んでいるのよね。

確かに、日本ってなんでもかんでもアニメ的な表現やキャラクターにして消費する感覚があるものな〜。

企業の広報に萌えキャラのイラストを使うのとか、近代文学の本の表紙をキャラクターイラストにするのとか……。

そうそう、そういうのがまさにスーパーフラット的なのよ。

誰もが見たことのある「お花」

村上が、さまざまな形で繰り返し使用しているイメージが「お花」。

村上作品はくわしく知らないけど、お花のイメージは知っているって人も多いと思うわ。

村上隆「お花」

村上と言えばこれというくらいにはイメージが浸透している「お花」。
グッズもたくさん出ている。
参照:Takashi Murakami | Rainbow flowers smile! ! (2020) | Available for Sale | Artsy

うちもそれだ!
「お花」を町中で見かけると、「あ!村上隆だ!」ってなるもん。笑

やっぱりそうよね。

でも、スーパーフラット理論をある程度分かった上で、お花を見てみると……、ちょっと見え方が変わらない?

ただのニコニコしてる花ではなく、なんか裏にひそんでいる感じがしてくるな……。

ふふふ♪

ちなみに、村上が自身の会社・カイカイキキ倒産の危機を乗り越えて「お花の親子」を発表したときに、村上はこんなコメントを残したわ。

僕の作品はハッピーなキャラクター達がニコニコしているので、僕の人格や制作現場も朗らかなハッピーなモノと勘違いしている人が大半だが、夢の創造には本当に吐き気を催すほどの苦渋がいつも隣に居る

引用:村上隆が苦渋を乗り越え《お花の親子》に込めた思い:「気持ちを閉じたり開いたりさせるのが芸術家の仕事」Tokyo Art Beat – ニュース、レビュー、インタビュー

村上隆「お花の親子」

参照:村上隆が苦渋を乗り越え《お花の親子》に込めた思い:「気持ちを閉じたり開いたりさせるのが芸術家の仕事」Tokyo Art Beat – ニュース、レビュー、インタビュー

カラフルで笑顔なお花の瞳の奥に、脈々と受け継がれてきた美術史やアートを創造することの意義などが垣間見えるぜ……!

お花の部分拡大1
お花の部分拡大2
お花の部分拡大3

……こっわ!!!

積極的にコラボをおこなう

ハイカルチャーとローカルチャーの境界線を曖昧にした作品にしている村上だけあって、さまざまなコラボレーションをおこなっているわ。

例えば、ルイ・ヴィトンとコラボしたり……、

ミーツ ネオ・ジャポニズム

大人気!ルイヴィトンと村上隆さんのコラボライン – AMORE

ビリー・アイリッシュのMVのプロデュースをしたり……、

カニエ・ウェストのCDジャケットをデザインしたりしているのよ。

グラデュエーション

参照:Amazon | グラデュエーション(期間限定特別価格) | カニエ・ウェスト, モス・デフ, ジョン・メイヤー, T-ペイン, リル・ウェイン, ドゥウェレ, アル・ビー | イーストコースト | 音楽

こういうコラボレーションを積極的におこなうのも、とても村上的であることがよく分かった!

「村上隆」の作品はどこで見れる?

村上の作品はポップカルチャーと密接な関係があるので、さまざまな形で目にすることがあると思うわ。

ただ、コラボ作品やグッズではなく、村上の作品を見たいっていう方もいると思うのよね。

たしかにな!

となると、「COMICO ART MUSEUM YUFUIN」(大分)であれば、村上作品を常設しているので鑑賞することができるわね。

あとは一作品だけではあるけど、「軽井沢現代美術館」(長野)にも村上作品はあるわ。

村上作品が見られる美術館やギャラリーってあんまり無いんだな〜。

常設となると、たしかにあまり無いわね。

ちなみに、村上と同様にスーパーフラットの表現をおこなっている美術家の作品であれば、カイカイキキで所有している
Kaikai Kiki Gallery
Hidari Zingaro

などで鑑賞することができるのよ。

村上本人の作品だけじゃなくて、村上がプッシュしている美術家の作品を鑑賞することで、よりスーパーフラット理論についての理解が深まりそうだな!

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